今、大ヒット中のドラマといえば、誰もがNHK連続テレビ小説『あまちゃん』と『半沢直樹』(TBS系)の名前を挙げるだろう。いずれもストーリーや、ドラマの内容が今の人気につながっているが、今回はタイトルに注目してみたい。タイトルにみるヒットドラマの法則とは? コラムニストのペリー荻野さんが解説してくれた。
* * *
もちろんドラマがヒットするには、中身が一番重要なのですが、それを後押しするのはタイトルの力だと思います。
『あまちゃん』と『半沢直樹』は、いずれも母音の“あ音”が多くて短いですよね。これはスマホでメールを打ったり、ツイッターでつぶやいたりするときに、とにかく打ちやすい。ツイッターでつぶやかれやすいから、話題になりやすいという一面はあると思います。2作品とも、放送中、放送直後にネット上での検索キーワードが急上昇しています。『Oh, My Dad!!』(フジテレビ系)なんて、正確に打つのはなかなか手間がかかってしまいますよね。
『半沢直樹』がよかったのは、タイトルに主人公の名前をもってきたことです。この手法は、2時間ドラマでよく用いられてきたものです。過去の作品では、『弁護士 高見沢響子』『弁護士・高林鮎子』などが挙げられます。女優はさまざまなキャラクターを演じますから、主人公の名前をタイトルにすることで“今度は○○という名前のキャラクターをやる”ということを視聴者に強く印象づけることができます。堺さんの場合も、これまでさまざまな役を演じていますから、半沢直樹という新しいキャラクターを演じるということを強烈に印象づけられたと思います。
あと、ドラマの制作者側に、半沢直樹というキャラクターで面白さを届けられるという自信があったのではないでしょうか。半沢直樹の「倍返し」というセリフが流行っているように、キャラクターのインパクトをタイトルにのせて視聴者に届けることができたわけです。そうした制作者側の狙いというのもこのタイトルから読み取ることができます。
『あまちゃん』はとにかくわかりやすいタイトルが一番といういい例です。あまちゃんにはさまざまな意味が含まれており、主人公の天野アキのあまちゃんでもあり、アマチュアのあまちゃん、ひよっこで甘えん坊のあまちゃん、海女さんのあまちゃんでもあります。シンプルだけれど、ドラマの内容をうまくタイトルにからめたというところでは、よく練ったセンスのいいタイトルだと思います。
今クール、あまりヒットしなかったドラマには『ぴんとこな』(TBS系)、『スターマン・この恋の星』(フジテレビ系)がありますが、このふたつタイトルからなかなか内容が想像しづらいという例です。もちろん、原作があってドラマのタイトルを同じにしなければならない場合もあると思います。意外性のあるタイトルで視聴者に興味をもたせるというアプローチのしかたもあります。『ぴんことな』は個人的には原作もドラマも面白いと思っていたので、サブタイトルを付ける作戦もあったかと思います。ただ今回は、タイトルのつけ方においては、『半沢直樹』『あまちゃん』のほうがより成功したケースと言えるでしょう。