作家・曽根綾子さんが『週刊現代』8月31日号に寄稿した<「私の違和感」何でも会社のせいにする甘ったれた女子社員たちへ>で突きつけた産休を取る女性を<自分本位で、自分の行動がどれほど他者に迷惑をかけているのかに気付かない人>と言及した提言が波紋を広げている。
まずは、今大きな問題となっているマタニティー・ハラスメント(マタハラ)について説明しよう。日本労働組合総連合会(連合)はこう定義している。
<働く女性が妊娠・出産を理由とした解雇・雇い止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的・肉体的なハラスメントで、働く女性を悩ませる「セクハラ」「パワハラ」に並ぶ3大ハラスメントの一つ>
産前に42日間、産後に56日間の休みを取れる産前・産後休業(産休)、その後、男女を問わず育児のために1年間取れる育児休業(育休)は法律で定められている権利だ。
しかし、実際には嫌がらせを受けるケースが多発している。今年5月に連合が実施した意識調査によると、20~40代の女性の25.6%、実に4人に1人の女性が、マタハラの被害に遭ったことがあると答えたのである。曽野さんはこうした声を上げる女性たちに対して、
<暴力的な行動は困りますけど、嫌味を言われた程度のことなら、うまく切り返して、相手をばっさりやっつけてやるくらいの会話力がなくてどうしますか>
と意見を述べたが、『ルポ産ませない社会』(河出書房新社)などの著書がある労働経済ジャーナリスト・小林美希さんは、こんな反対意見を口にする。
「いざ産休や育休を取ろうとすると、“産んで戻ってきても、居場所はないよ”と言われて、会社を辞めざるをえなかったり、逆に“代わりがいない”と言われて休ませてもらえず、無理をして働いて流産してしまったり。なかには中絶を選ぶ人すらいるんです。これは会話力云々ではなく、正社員と非正規雇用など、職場の身分階級を盾にした嫌がらせなのです」
※女性セブン2013年9月19日号