テレビ業界の勢力地図ががらりと変わった。ドラマやバラエティのヒットでテレビ朝日が平均視聴率でトップに躍り出る一方、8月の視聴率ではフジテレビはTBSに抜かれ4位に転落した。
ある民放のプロデューサーは、こう証言する。
「特にドラマ部門についていえることですが、フジテレビの不調の原因は、広告業界と結んで始めた“マーケティングありき”の手法が視聴者に飽きられていることが大きい。トレンディードラマの時代に開拓されたもので、まず数字の取れる人気アイドルをキャスティングして、ストーリーは二の次、三の次というやり方です。
そのほうが企画を通すにもCMスポンサーを集めるにも好都合ですからね。このやり方だと、その人気アイドルのイメージを損ねるからと、最悪の場合所属事務所の言いなりに脚本を変えてしまったりする。これでは面白いストーリーなどできるはずもない。今はそういうタイプのドラマが総じて大コケしている」
確かに、昨今の高視聴率ドラマは、脚本を重視し、なおかつその脚本が時代を反映しているケースが多い。『半沢直樹』やシングルマザーを扱った『Woman』(日本テレビ系)は、その好例だ。テレビ朝日の『相棒』も、一話完結でも満足できる「物語」がある。
テレビ朝日OBで『放送レポート』編集長の岩崎貞明氏がいう。
「テレ朝のドラマは、いい俳優をとれずにフジやTBSに後れを取っていた。しかしその分、自社でいい内容のドラマを作ろうという人材が育っていった。社会問題を巧みに織り交ぜることで、テレビの主な視聴者層となった高年齢層の支持を得たことも大きい」
もうひとつは長期的な戦略の有無だ。テレビ朝日のドラマ関係者がいう。
「ウチの局では“ひとつの時間帯についた視聴者を逃さない”という戦略を徹底した。たとえば『相棒』をやっている水曜9時台は、古くは『はぐれ刑事純情派』からの刑事モノ枠で、『相棒』を放送しないクールでも刑事モノしかやらない。
昨年のドラマ視聴率ナンバーワンで米倉涼子主演の『ドクターX』や、20%を超えている今期の『DOCTOR2』は、同じ木曜9時枠で、これからは医療ドラマ枠に育てようとしている。TBSが水戸黄門の放送時間を変更して大コケしたり、フジが月9で恋愛モノでないものを放送して数字を下げたのを見ての反面教師ですよ」
※週刊ポスト2013年9月20・27日号