本業の広告収入が低落傾向にある中、テレビ各局は、副業を強化してきた。番組関連本やグッズの販売のほか、映画化、DVDなどへの展開は今や当たり前だ。
それ以上に力を注ぐのがイベント事業だ。TBSは昨年、「ベルリン国立美術館展」、舞台「ウエスト・サイド・ストーリー」などのイベントや興行を手掛け、64億円の収入。「ツタンカーメン展」をヒットさせたフジテレビの昨年度のイベント事業収入は100億円を超えた。
テレビ局のサイドビジネスがこれほどオイシイのは、自局のCM枠やバラエティ、情報番組で、自局出資の映画や主催イベントの宣伝をタダで流せるからだ。他業種の企業が同じ宣伝効果を得ようとすれば、何千万円もテレビ局に支払わなければならないが、彼らは電波にタダ乗りするだけ。しかも、その電波は政府から各局にタダ同然で与えられた免許で使い放題なのだから、笑いが止まらない。
「数年前、日本の大きなサーカス団が倒産しました。その背景には、某キー局が協賛する外国サーカス団の宣伝を、人気アイドルなどを使って自局の番組内でバンバン宣伝し、お客さんを根こそぎ持って行ってしまったことがあるといわれています」(キー局幹部)
視聴率も広告収入も下がる一方のフジは、社内で「起死回生のホームラン」と囁かれるサイドビジネスがいよいよ現実のものとなりつつある。
フジが出資・運営する『ダイバーシティ東京』が東京都から「東京DAIBA・MICE/IR国際観光戦略総合特別区域」の認可を受けたのは2011年9月のこと。IRとは、カジノを中心として宿泊、飲食、小売り、娯楽施設など複数の機能を統合させた一大観光施設を指す。要は、お台場にカジノを持ってきて、その周辺のレジャービジネスを丸ごと独占してしまおうという計画である。
「秋の国会で、フジが待ちに待ったカジノ法案が提出される予定です。日枝久会長は法案の通過を睨み、8月だけで複数回、安倍首相と会っている。昨年3月には局内に『特区事業準備室』も設立済みで、ゴーサインさえ出れば、すぐに動き出せるほど準備は万端です。
ただテレビ局が露骨にカジノ事業に乗り出すと批判も出てくるので、当面は再開発の旗振り役となり、取得した土地やビルなどを提供して利益をあげる手法を取る方針です」(フジ局員)
※週刊ポスト2013年9月20・27日号