9月28日にいよいよ最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『あまちゃん』。今や国民的人気を誇るこのドラマは、“日本の朝を変えた”と言ったら言いすぎだろうか。最高視聴率は27.0%を記録(9月16日放送)し、朝の放送以外の再放送分も合わせると、視聴率は50%超ともいわれるだけに、もはや社会現象の域に達している。
いつも「軽食&喫茶リアス」の隅っこに座り、琥珀を磨いていた琥珀堀りの勉さんを演じた塩見三省(65才)は、アキ(能年玲奈)をはじめ『あまちゃん』の出演者は全員が人間の本質をありのまま伝えられたと話す。
「人間はこんな強い部分もあるけど、こんな弱い部分もある、そういったものを半年間かけて、じわじわ見ていただけたんだと思っています」(塩見)
アキはもちろん、時には傍若無人に振る舞い、春子(小泉今日子)ですらも夏の前では思いをきちんと言葉にできないひとりの子供。そんな強さと弱さを登場人物全員が抱えているからこそ、私たちは共感し、自分を肯定し、応援してもらえる気さえしたのかもしれない。
塩見は、その象徴はアキの「かっけえ」にあると指摘する。アキはよく「かっけえ」という。それは、たとえば、残念な町・北三陸だったり、時代遅れのミサンガだったり、それこそアイドルという虚業だったり…。
「その“かっけえもの”って、意外と今の世の中からずれたことが多い。でもだからこそその“かっけえ”が皆の胸に響くんですよ。
今の時代ってすごく生きにくいと思うんです。誰も振り向いてくれなかったらどうしよう、これでいいのかって不安にさいなまれたり…そういう人たちも、アキの“かっけえ”のひと言で救われる。そのまま突っ走っていいんだよって、エールを送られている気がするんじゃないでしょうか」(塩見)
そして、『あまちゃん』をひと言で評するなら、「人を思うドラマ」だと塩見は話す。
震災後、アキが北三陸に帰ってくるシーンでは、みんな“アキちゃんなら北鉄に乗ってくるに違いない”と、駅のホームで出迎えた。
「『お帰り』『ただいま』というやりとりにこそ、このドラマのメッセージがにじんでいるのではないでしょうか。たとえば、当初、春子さんは『ただいま』って言えなくて、夏さんもそんな春子さんに『お帰り』って言えなかった。
それが最後にはただいま、お帰り、って言えるようになる。人を思い、その思いを受け容れる――そういう一途で素直な他者への思いが、このドラマの底にずっと流れていると思うんです。見てる人、出演者、いろんな人が一緒に生きている、その地続き感があったドラマ。テレビという枠を超えて、自分の家族や友達と同じように、アキちゃんがみなさんの日常生活に入って来た」(塩見)
アキが本当にいるような気がするからこそ、あまちゃんロス症候群になる人が出てきているのだ。
※女性セブン2013年10月3日号