近年、女性にとってアンチエイジングは大きなテーマだ。雑誌から“美魔女”という言葉が生まれ、平子理沙(42才)や梨花(40才)などエイジレスビューティーが次々に登場し、彼女たちのような「大人女子」を目指す多くの女性たちが、少しでも若く、きれいになりたいと思い、日々努力するようになった。
街にはとても孫がいるようには思えない若々しい女性も増え、例えば森山良子(65才)などのように、孫に“おばあちゃん”ではなく、下の名前で呼ばせている人も多い。
そんな流れのなかで、しわを「自分の年輪」だと言って隠さない生き方は、ある意味アンチエイジングとは真逆の生き方といえる。しかし、それは決して特別な生き方ではない。
例えばメリル・ストリープ(64才)やソフィー・マルソー(46才)は、老いに逆らうことなくその年代の美しさを放ちながら自然体で生きている。またオードリー・ヘプバーン(享年63)はインタビューで、「しわは私の人生の歩みなのよ」と話していた。一線を退いたあとユニセフの活動に励み、その姿が特に輝いていたと話す人は多い。
生前、彼女と親交のあった加藤タキさんはこう話す。
「彼女はアンチエイジングを一切しないかたでした。年齢を重ねることを恐れたり恥ずかしがることはひとつもなかった。トレンドなどに惑わされず、自分の生き方を貫く姿は凜としていましたね。そうやって堂々と生きているのはやっぱりカッコイイですよね」
現在公開中の『クロワッサンで朝食を』が話題だ。ミニシアター作品としては異例のにぎわいで、立ち見が出る日もあり、7月の公開からロングラン上映となっている。観客を虜にしているのは、10年ぶりに映画主演を務めたジャンヌ・モロー(85才)。前出・加藤さんはこう見ていた。
「シャネルを着こなして年を重ねた老女役は素晴らしかったです。こんな風にたとえるのがいいのかわかりませんが、ワインでいえば『ロマネコンティ』。『ボジョレーヌーボー』も若々しくていいですが、何十年も年を重ねないと」
また作家の沢木耕太郎氏は自身のコラムでこう書いていた。
<「老醜」に近い風貌(ふうぼう)とスタイルをそのままさらけ出しながら、彼女自身の華麗な過去と、癖の強い富裕な老女という役柄の過去とを巧みに重ね合わせることで、無残な神々しさとでもいうべき不思議な輝きを発している>
※女性セブン2013年10月3日号