女性たちの間で、「キスフレ」なる言葉が流行語になっているという。キスまではする関係の「キス・フレンド」のことだが、一昔前なら、キスをしたら次のステップも……という合図ではなかったか。脳科学者の中野信子氏は、キスをめぐって男女に埋め難い溝があるという。
「女性の脳はキスという敏感な部分が触れ合う行為によって、セロトニンやオキシトシンといったホルモンが分泌されることにより、癒しの作用を得て幸せを感じる。一方で男性が満足感を得るためには、狩りや戦闘の際に分泌されるドーパミンが必要。これはセックスで大量に分泌されるもので、男性はキスだけでは満足できないんです」
よって、キスフレはすぐに破綻するケースも多い。
「私の知るバツイチ子持ちの女性は、3~4回キス止まりの関係をつづけたあと、振られてしまった。彼女はキスだけで満足していたんですが、男性は先に進みたかったようで。お互いが良しとならないと、キスフレは成立しないんです」(夫婦問題研究家の岡野あつこ氏)
『キス教本』などキスにまつわるハウツー本を数多く執筆する由良橋勢氏は、「昭和の男なら、キスのあと腕を掴んででもセックスに持ち込んでいたでしょうが、いまの男は一度断わられるとセクハラだと思われるのが怖い、プライドが傷つくのが怖いとなって、しょうがなくキスフレ止まりで我慢してしまう」という。
漫画『アラサーちゃん』で若い女性の恋愛事情を描く峰なゆか氏が、そうした男のナイーブさを利用した、女性たちの戦術を明かす。
「真面目な男性ほど、やれなくてもいつかはと思って我慢し続けられる。で、結果的にキスフレ扱いが続く。要するに、真面目な男性がいいようにときめきを搾取されているんです。キスフレから本命になるなんて聞いたことないですから」
ときめきを搾取され続けるだけで一生セックスにはたどり着けない、まさに“キスフレ地獄”である。
※週刊ポスト2013年10月4日号