当サイトでも度々報じてきた超高画質の「4Kテレビ」だが、どこまで一般家庭に普及してきたのか。
調査会社BCNによると、テレビ全体に占める4Kテレビ販売台数は0.8%とわずかながら、50インチ以上の大型モデルでみると、金額ベースで約2割を占めるまでじわじわと売り上げを伸ばしているという。
10月1日から開かれる最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC JAPAN 2013」(千葉・幕張メッセ)でも、主要メーカーのブースには4K対応の液晶テレビがズラリ。今まで本格参入をしてこなかったパナソニックや三菱電機も新製品を参考出展しており、いよいよ“4Kテレビ戦争”が本格化するものと見られる。
某電機メーカーのテレビ事業部担当者がいう。
「これまでどんなにメーカーが高画質の4Kテレビを開発しても、放送コンテンツがそれに対応していなかったために、消費者にフルスペックの魅力を伝えきれなかった。でも、来年にはようやくサッカーW杯の前に試験放送が始まるうえ、2020年の東京五輪が決まったことで、俄然、国が高精細放送に本腰を入れ始めた。これで一気に弾みがつくだろう」
スポーツのビッグイベントは、テレビの買い替え需要を促す格好の材料となる。さらに、4Kテレビは動きの早いスポーツシーンを画質のブレなく大画面で楽しむことができるのが売りとくれば、メーカーもみすみす商機を逃す手はないだろう。
だが、今回のCEATECではテレビの“4K化”に自ら待ったをかけるような製品が見られたのも特徴的だ。すでに4Kテレビを発売済みの東芝とシャープが、現行フルハイビジョン(2K)の“プレミアムモデル”となるテレビを大々的に展示したからである。
東芝が11月上旬に発売する薄型テレビ『REGZA Z8/J8』の新商品は、同シリーズの最高峰モデルに付けられる「Z」の型番になっている。しかし、スペックはあくまで「2K」のハイエンドモデル。周知の通り、4Kテレビは2Kの4倍の解像度を誇り、その差は歴然としている。
いま、敢えて画素数の少ない2Kテレビを売り出す理由を東芝の担当者に聞いてみた。
「確かに2Kよりも4Kのほうが遥かに高精細ですが、4Kはまだ値段も高めですし、実際に4K放送が始まってからでないと評価できないとネガティブに考えられている消費者は多いんです。
そんな人たちのために、手薄になっている2Kの技術に色彩の豊かさや鮮やかさ、輝きをプラスして、より原画に近づけました。4Kにいく一歩前の段階として、2Kもここまで高画質で見られるんだと満足していただけると思います」
東芝では55インチ以上の大画面で高画質を求める消費者には値段も高めな4Kテレビを、それ以下のサイズには2Kをと販売戦略で棲み分けを図る予定。プレミアムモデルとはいえ、2Kの価格は42インチで12万~16万円、55インチでも22万~26万円と、従来では考えられないほど激安だ。
シャープが年内に発売を目指している『クアトロン プロ』も、フルハイビジョンながら4K相当の高画質表示ができる新技術が採用されている。同社の広報担当者は、「すべてのテレビが4Kに置き換わるわけではなく、消費者が求める画質レベルや使い方もさまざま」と、あらゆるニーズに対応した製品を出していくと強調した。
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏は、4Kとともに2Kのテコ入れに動くメーカーのホンネを代弁する。
「サッカーに興味のない人は五輪まで7年もあるので、『もう少し待てばもっと安くてもっとキレイな4K、8Kテレビが出るかも』と、結局いつまでも買い控えされる恐れがあります。それならば、とりあえず“つなぎの逸品”を安価で出して、数年後に自社ブランドの高精細テレビに買い換えてもらおうという囲い込み戦略を取っているのでしょう」
4Kテレビもようやく1インチ1万円以下のモデルが登場しているが、「台数がもっと出なければ値段も劇的に下げられない」(大手メーカー関係者)状況は続く。過去のトラウマに縛られず、日本メーカーのテレビ事業復権に期待したいところだが……。