内閣府の「平成23年版高齢社会白書」によれば、65歳以上の人口は過去最高の2958万人。そのうち、501万8000世帯が単独世帯。要するに高齢者の6人に一人は一人暮らしをしている。
これが、社会問題を生んでいる。孤独死の増加だ。2011年のニッセイ基礎研究所の発表によれば、65歳以上で「死後4日以上経過して発見された人」は1万5600人を超える可能性もあるという。
自分の行く末に「おひとりさま」を思い浮かべる現役世代は少ないだろう。だが、その日は突然やってくる。68歳の元銀行員が首を傾げながら振り返った。
「65歳で定年退職したときには、この先には、楽しいリタイア生活が待っているものと思っていました。毎週のようにゴルフへ出かけ、その帰りに温泉に寄ったりと。でもいざ、時間に余裕ができると一緒にコースを回ってくれる人がいなかった。そうなって初めて、仕事の人以外とゴルフに行ったことがなかったことに気がついたんです」
他人事ではない。企業戦士は、現役を引いたその瞬間におひとりさま化する。背景にあるのは核家族化や都市部への人口集中。地縁や血縁を捨て都会で仕事最優先で過ごしてきたものの、その仕事が奪われた瞬間、人生を否定されるかのように属する社会がなくなって孤立するのだという。
『隣人の時代~有縁社会のつくり方』(三五館)著者の一条真也氏は「ある団地で調べたデータでは、孤独死をする人は女性より男性が圧倒的に多かった。特に弁護士や医師など『先生』と呼ばれる職業に多かったそうです」と語る。その理由は「プライドが邪魔をして、挨拶すら気さくに振る舞えないからではないか」と推測する。ではどうすればいいか。
「リタイア後の人脈作りには、まずそれまでの自分を捨てる必要がある。そして素の自分が何をしているときが一番、楽しいかを考えるべきです」(同前)
※週刊ポスト2013年10月25日号