釣りの愛好家が増えているが、身近な場所にも危険な生物が増えていると、釣り関連の著書を多く執筆・編集している高木道郎氏が解説する。
* * *
身近な海に生息する危険生物はたくさんいて、魚類だけでもかなりの数が確認されている。それらは次の3グループに分けることができる。A……ヒレなどに毒棘を持つ魚。B……皮膚や内臓などに毒性を持つ魚。C……毒はないが鋭い歯やヒレを持つ魚。
Aはアイゴ、ハオコゼ、ゴンズイのほか、釣りではあまり釣れないが、ミノカサゴやオニオコゼやエイにも注意。Bはクサフグやキタマクラといったフグ類やソウシハギ、堤防や磯から釣れる心配はないが、ビタミンAの過剰摂取によって中毒症状を引き起こすイシナギ、ワックス(ロウ)が消化限度を超えて有毒症状を引き起こすバラムツ、アブラソコムツなどがいる。
このほか、底性渦鞭毛藻(ていせいうずべんもうそう)が食物連鎖によって特定魚を毒魚に変えてしまうシガテラ毒にも注意が必要だ。
底性渦鞭毛藻が付着する石灰藻は死滅したサンゴ礁に多く、以前は南方海域だけに見られた毒化現象である。しかし、近年は温暖化による水温上昇、埋め立てや水質汚染がもたらすサンゴ礁の崩壊などがシガテラ毒の危険範囲を広げ、釣りの対象魚でもあるイシガキダイ、ヒラマサ、アオブダイなどにも毒化した個体が見つかっている。
東京都市場衛生検査所が市場で販売自粛を促している魚はバラフエダイ、バラハタ、ギンガメアジ、カスミアジ、サザナミハギ、キツネフエフキ。オニカマスは販売禁止魚。シガテラ毒は冷凍及び加熱処理でも分解せず、毒化している魚を外見から判別できないのも厄介な点だ。
Cはサメ、歯の鋭いサワラ、イシダイ、フグ、エラブタやヒレが鋭いスズキ、マダイなど。メバルやカサゴ、メジナやクロダイをはじめ、ほとんどの魚が鋭い歯とヒレを持っているため、素手で扱うのは危険。釣りにはフィッシンググローブが欠かせない。
■高木道郎(たかぎ・みちろう):1953年生まれ。フリーライターとして、釣り雑誌や単行本などの出版に携わる。北海道から沖縄、海外へも釣行。主な著書に『防波堤釣り入門』(池田書店)、『磯釣りをはじめよう』(山海堂)、『高木道郎のウキフカセ釣り入門』(主婦と生活社)など多数。
※週刊ポスト2013年10月25日号