つらい二日酔いに効果があるのがシジミ汁などの二枚貝の料理だ。だが砂抜きをちゃんとしないと、ジャリジャリとした食感が残ってしまう。砂抜きと旨みを増す下準備の仕方を食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が伝授する。
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このところ「酔った上での乱行」がメディアを賑わせている――。と思ったら、国会で超党派議員でつくる「アルコール問題議員連盟」(会長・中谷元自民党副幹事長)が「アルコール健康障害対策基本法案」を今国会に提出する方針を固めたという。「飲み過ぎが飲酒運転や暴力、虐待といった社会問題を引き起こしている」と注意喚起をすすめるようだ。
とはいえ、ついうっかり飲み過ぎてしまうこともあるだろう。日常的につまみでサポートする習慣をつけておきたいところ。シジミ、アサリ、ハマグリなどの二枚貝がアルコールのダメージを軽減してくれることは知られているが、砂抜きができていない貝の「ジャリッ」という食感への嫌悪感であさりなどが苦手だという人もいる。
だがきちんと処理をすれば、このリスクはほとんどなくなる。重要なのは砂抜きをするときの環境だ。「砂抜きがうまくいかない」と嘆く人に詳しく聞いてみると、塩の量を測らずに適当に放り込んでいたり、明るいところに置きっぱなしにしていることが多い。
貝の砂抜きでもっとも重要なのは、その生息環境と似た状態を作ること、そして砂を吐きやすくさせ、いったん吐いた砂を吸い込ませにくくすることだ。
まず何よりも重要なのは塩分濃度だ。アサリならば海水と同じ3.5%。汽水に生息するシジミは0.5~1%の塩水を作っておく。この量をいい加減にすると、貝の活性が低くなる。当然、砂をきっちり吐かなくなるばかりか、浸透圧の調整機能が低くなり、細胞内のアミノ酸を十分に増やしきれなくなる。逆に塩をきっちり計れば、貝はきちんと砂を吐き、旨味も増幅するのだ。ちなみに水の温度は15~20℃くらいが貝の活性が高くなる。冷蔵庫に入れてはならない。
さらに旨味を増やしたければ裏技もある。2009年、独立行政法人水産総合研究センターは、「ブドウ糖を海水に入れるとアサリの旨味成分が増える」と発表した。出荷前のアサリをブドウ糖添加海水に24時間漬けたところ、旨味成分のコハク酸の量が2.8倍になったというのだ。この方法は砂抜き時にも応用できる。砂抜きのための塩水にはちみつをほんの一滴だけ加えればいい。
容器はできれば底が平らなものがいいが、鍋でもボウルでもなんでもいい。ただしガラスのボウルは光を通してしまうので、避けたいところ。砂のなかにいる貝は暗い場所の方が活性が高くなり、砂を吐きやすくなる。
容器の内側にはザルを敷いておく。目はあらいほどいい。吐いた砂をもう一度吸わせないようにするには、水管の届かないところに砂を落としてしまえばいい。貝の上部が少し水から出ている程度の水量を入れたら、暗い場所に置くか上に光を通さないフタをして3~4時間以上置く。
やり方をまとめると、塩水の濃度はアサリ3.5%、シジミ0.5~1%。光を通さない容器にザルを敷き、水洗いした貝と塩水を入れる。塩水の量は貝の上部が少し水面から出ている程度。暗い場所で3~4時間置く。みそ汁、吸い物、パスタに酒蒸しの味わいが劇的に変わるはずだ。といっても、酒のダメージを軽くしてくれるわけではないので、くれぐれも飲み過ぎにはご注意を。