中国をめぐる各国の思惑は錯綜している。ジャーナリスト・富坂聰がレポートする。
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イギリスが中国に急接近している――。
2013年の秋になって以降、イギリスは、中国人に対するビザ手続きの大幅な簡略化を打ち出したのに続いて、10月にはそれまで香港が中心だった人民元取引を一気にイギリス国内でも拡大する方針を発表している。
金融センターとしてシティが人民元に対して新たな一歩を踏み出したことに驚きの声が上がっていたのだが、そのざわめきが収まらないなか、今度はイギリス国内で今後進められる原子力発電建設プロジェクトに、中国企業が参入することを認める決定を行った。
長期にわたり中国を訪れていたイギリスのオズボーン財務相が、南部の第三原子力発電所を視察した末に記者に対して語った。
事業に参加するのは国有企業の原発大手・広核集団で、イギリス南西部のヒンクリーポイント発電所への出資を行うことになるのだが、その際50%以上の株式の取得も認められるというのだ。
現状ではまだ覚書が交わされただけの段階だが、今後原発建設に大きく舵を切るイギリスでは中国企業の参入は安全保障上の問題ともぶつかり、政府の思惑通り「中国マネーの呼び水」というだけで済むのか、議論を呼びそうだ。