1997年8月、世界中に衝撃が走ったダイアナ元英皇太子妃の交通事故死。36才の若さでこの世を去った後も、ダイアナは多くの人に愛され続けている。没後16年の時が経つが、ダイアナの事故死については、英王室や英軍によるものなど度重なる陰謀説など、毎年、命日が近づくと注目され続けている。真相はベールに包まれているが、噂され続ける“陰謀説”への見解について、映画『ダイアナ』(10月18日公開)でダイアナの素顔を描いたドイツ人監督、オリヴァー・ヒルシュビーゲル氏に直撃した。
――ダイアナの事故死については、今でもいろいろな説が飛び交っています。陰謀説も出ていますが、監督の見解は?
オリヴァー監督:ダイアナの事故には、いろいろな要因が加わっています。運転手が酔っぱらっていたということや、誰もシートベルトをしていなかったこととか、それらが全て誰かの陰謀だったとしたら、ちょっと細かすぎるんじゃないかと思います。疑似刑務所で試みた心理実験を撮った映画『es(エス)』や、テレビでも人間の心理に関するものを撮ってきた経験で言うと、人は動機がないと人の命を奪ったりはしないものです。だから、それが見えない限りは、ぼくには陰謀だとは思えないですね。
ぼく自身は映画の中で、事故について、わざと細かいところは見せないと考えました。どのように絵コンテを組み立てて工夫しても、観客の立場で事故のシーンは見たいと思えなかったんです。だから、映画の中では一切見せていません。ただ、エレベーターに乗り込んで、車に乗り込むことで、事故が起こる不吉な予兆のシーンだけ、見せることにしました。
――ドイツ人の監督だからこそ踏み込めた、ダイアナの素顔と王室の裏側は?
オリヴァー監督:ドイツ人の自分が撮ることのいちばん大きなアドバンテージは、偏見や先入観がないということですね。ダイアナに対する純粋な好奇心がありました。そういう純粋さがストーリーを綴るには必要で、それを英国人ではないからこそ持っていたことは良かったですよね。ありきたりな表現を避けるだとか、家族や王室やダイアナ妃のことも、これまでどういう風に描かれているかではなく、自分の感覚で描くことができました。
ぼくの前作『レクイエム』という映画でも、北アイルランドを舞台に実際に起きた事件がモチーフでしたが、ドイツ人のぼくが撮った映画を北アイルランドの人が観て「これは本当に北アイルランドですね」って言ってくださった。ドイツ人であろうとも英国の物語は語れるんです。そのためにはもちろんリサーチを綿密にし、そしてダイアナは非常にスピリチュアルな人なのでそういうサインをこちらがきちっと把握することは必要でしたね。
『ダイアナ』
世界で最も有名なプリンセスとして英国のみならず、世界各国の人に愛されたダイアナ。その裏で、夫と別居、ふたりの王子とも離れて寂しく暮らし、深い孤独を感じていた。そんな中、出会った心臓外科医との愛。ふたりを追いかけるゴシップ誌の過熱報道。王室との確執。離婚したダイアナは、弱き者を救うために世界中を飛び回り、人々を癒し、政治を動かす力をも持ち始める――1997年に交通事故で亡くなるまでの2年間、ダイアナの孤独、愛、活動…知られざる真実のダイアナを描く感動の物語。10月18日、全国ロードショー。