組織で働いていれば自分もその訴えを起こされるかもしれないセクハラ。だが、セクハラには対価型と環境型の2種類があるということを知っておきたい。
「対価型とは、男性側の性的な言動に対する女性側の対応によって、解雇、降格などの不利益を受けるもの。例えば、男性事業主が女性従業員に性的な関係を求め、拒否されたため解雇するといったケースです。
一方、環境型は男性側の言動によって女性側の就業環境が害されるものを言います」(アディーレ法律事務所の刈谷龍太弁護士)
環境型セクハラでは本人に自覚がないことが多い。ワイシャツを直接素肌に着ていることが理由で訴えられたのは、大手代理店に勤務するA氏である。
「ある女性社員に『ワイシャツから乳首が透けて見えるのがとても嫌』と会社にセクハラで訴えられたんです。正直、そんなことで……と絶句しました」(A氏)
若い頃から冬以外は“素肌にワイシャツ”で通してきたA氏。幸い、女性社員に「下着を着る」と約束することで異動などのペナルティは免れたものの、「社内での評価はガタ落ちです」と肩を落とす。
だが、セクハラ裁判を受け持つことも多い弁護士によれば、もし裁判で争ってもA氏がセクハラ認定されていた可能性があるという。
「環境型セクハラでは複数回・継続してという側面も争われます。もし女性社員がそれまでに何度もAさんに対して不快感を表明していたらAさんはかなり不利な立場になる。会社の壁に水着ポスターを貼っていたことが、セクハラとして認定されることもあります」
ただし、裁判でも女性の訴えがそのまま聞き入れられるわけではない。セクハラ冤罪に詳しいアムール法律事務所の大渕愛子弁護士がいう。
「一般女性が明らかに不快と感じるような性的言動は別として、そうではない微妙な言動については、“女性が嫌だと表明しているにもかかわらず続けることがセクハラ”なのです。
女性が『髪型がきれいだね』と言われた時に『私はそう言われるのが好きではありません』とはっきり表明し、それなのに周囲の男性たちが『髪型がきれいだね』といい続けるような事態になって、はじめてセクハラが成立します」
※週刊ポスト2013年11月1日号