髪型をほめるのも避けるべき、などとセクハラの常識は以前より浸透したように思うが、トラブルは増え続けている。ある企業の法務担当者はこう嘆く。
「男性上司が女性社員のお尻や胸を触ったり、エッチな言葉を投げかけるなんていうことは論外だし、実際にはほとんどない。セクハラだと声をあげる女性は増えているけど事情を聞くと、セクハラは言い過ぎだろうという微妙な話がほとんど。
男性社員が妻と子供の写真をデスクに飾っていたら、お局OLが『私が未婚なことをバカにしている!』と激怒するみたいな話にはため息が出てしまう」
それでも女性社員に訴えられたら、圧倒的に不利なのは男性社員のほう。企業イメージを守りたい会社側としては、表面化させないことが最優先だからだ。
「水面下で穏便に片づけるために、まず女性に頭を冷やすように説得。それでもダメなら、男のほうを一方的に子会社に飛ばして、女性社員の怒りを解くこともある」(法務担当者)
企業側の理不尽な裁定に異議を唱えて法廷闘争に発展するケースも珍しくない。
こうした裁判でも、男性側は圧倒的に不利なのが現実だ。セクハラ冤罪に詳しいアムール法律事務所の大渕愛子弁護士がいう。
「セクハラ裁判の多くは男性上司と女性部下の間で争われます。その場合、裁判所は男性上司が社内の力関係を利用して女性に関係を迫った、という構図を認定してしまいがちなのです」
長引くことを嫌う男性側が女性に示談をもちかけて和解に至ることも多いが、その相場は30万~50万円。裁判で負ければ100万円前後の慰謝料を取られることもある。さらに会社を辞めざるを得なくなるなど損失は計り知れない。
※週刊ポスト2013年11月1日号