韓国で、新たな反日の煙がくすぶり始めている。火種は「国宝第一号」に指定されている南大門(正称・崇礼門)の丹青(タンチョン)と呼ばれる伝統的な彩色部分。今年4月に復元工事が終わったばかりなのだが、すでに20か所以上にわたって剥離が見つかったという。その理由について、韓国文化遺産政策研究所のファン・ピョンウ所長が「日本製の接着剤・顔料を使用したことが原因のひとつ」と述べたと報じられたのだ。
南大門は李氏朝鮮時代の1398年の創建だが、2008年に放火による火災で焼失。2010年2月に始まった門の復元工事は、建設当時の様式を再現することを旨とし、電動工具を一切使わない伝統工法を取り入れたばかりか、作業員にも民族衣装を着用させるという念の入れよう。復元は今年4月に完了したが、その作業中に「丹青に使用する顔料と接着剤が日本からの輸入品」であることが明らかになり、韓国内で物議を醸していた。
丹青は、陰陽五行思想に基づいた青、赤、黄、白、黒を基本として描かれる韓国独特の模様であるため、
「伝統的手法による国宝復元作業なのに、韓国ではなく日本の製品を使用するとは何事だ」といいたい気持ちはわからなくはない。しかし、韓国の伝統的接着剤の製造技術はすでに1980年代に途絶えており、文化財庁も「品質のよい材料を使用するために避けられない選択だった」と説明していた。
だが、いざ問題が起こると再び矛先は日本へ。ネット上には顔料を納入したという日本の企業名が書き込まれ、批判の的になっている。京都にあるその顔料会社に聞くと、「政治的なこともあるのでコメントできない」と沈黙。
とんだとばっちりを受け、明らかに困惑している様子だ。発言の真意を確かめるべく、当の発言をしたファン・ピョンウ氏に取材を依頼したが、「前にも日本の新聞社にあることないこと書かれてえらい目に遭ったんだ。話すことなんて何もない!」と電話を切られてしまった。
※週刊ポスト2013年11月1日号