かつてジャーナリストの筑紫哲也氏はネットを「便所の落書き」と評したが、日本のネット言論の成熟には何が必要なのか、在米ジャーナリストの武末幸繁氏が解説する。
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もともと米国には保守、リベラル、中道を問わず自らの立場を明確にして意見を戦わせるという建国以来の伝統があり、左右陣営のせめぎ合いでオピニオンブログが盛んになった経緯がある。
米国のオピニオンブログには超タカ派発言で名をはせるFOXテレビのコメンテーター、ミシェル・マルキンなどの個人ブログもあるが、活発な議論の場となっているのは主にニュース集約ブログだ。保守系では「タウンホール」「ナショナルレビュー・オンライン」、リベラル系では「デイリー・コス」「ポリティコ」「リベラルオアシス」などがあり、有識者や著名なコラムニストが多数寄稿している。
日本でも有識者の個人ブログはあるが、市民の問題意識を喚起する提言は少ない。情報発信も一方的になりがちだ。またユーザー参加型のブログでも匿名の書き込みが幅を利かせ、気に入らない意見は無視を決め込むか批判に終始する風潮がある。
日本のネット言論が成熟するためには、有識者が積極的に問題提起、情報を発信し、それに対しユーザー同士が臆することなく議論を交わせる質の高いプラットホーム作りが必要不可欠だ。
※SAPIO2013年11月号