昨年8月に東京商工会議所が中小企業(従業員300人以下もしくは資本金3億円以下)1981社と金融機関240店舗に聞いたアンケートでは、82.2%の企業が金融機関に「金利の優遇」を求めているのに対し、“求められていると思うサービス”として金利の優遇をあげた金融機関はわずか8.2%。一方で、「経営指導・アドバイス」を求める企業は10.3%しかないのに、金融機関は83.6%が求められていると自負している。企業と銀行の“スレ違い”を如実に物語っているのだ。中小企業経営者がこぼす。
「銀行は金融庁の指導もあって、企業の経営指導やアドバイスに力を注ごうと思い込んでいるが、そんなことよりも当座の資金を用立ててほしいというのが本音です。そんなものに悠長に耳を傾ける暇などない」
さらに、中小企業に銀行への不満を聞いたところ、1位が「担当者が頻繁に変わる」、2位が「消極的な貸し出し姿勢」、3位が「支店長によって対応が変わる」だった。
ただでさえ銀行員は転勤が多いことで知られる。「やっと打ち解けて今後の経営について親身に相談などに乗ってもらっていたところなのに……」という不満を口にする経営者の声や、「担当者が変わることで、融資のために業績や経営状況を一から説明しなければならない。支店長が変わると、融資が急に慎重になったり、提出する書類の数が増えたりと戸惑うことも多い」(前出・中小企業経営者)という声がアンケートの結果に反映されているといえよう。
借り手に返済猶予などを認める中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が今年3月末に期限切れを迎えたが、金融庁は「今後もスタンスを変えない」という方針を打ち出した。
最近では金融検査マニュアルの方針を変更し、「融資を増やせ」と大号令をかけるなど、一見すると、中小企業を“下支え”する方向性を示しているように見える。だが、実際には長らく「貸すな」といわれてきたために、「融資のノウハウすらわからない銀行員が増えている」(メガバンク幹部)という有り様なのだ。
※週刊ポスト2013年11月8・15日号