安倍政権が臨時国会で成立を目指している「特定秘密保護法案」。これが成立すれば、日本は言論統制社会となってしまう。それと同時に法案成立を目論んでいるのが「児童ポルノ禁止法改正案」だ。その危険性をジャーナリストの武冨薫氏が指摘する。
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「特定秘密保護法案」とならんで、言論統制の両輪のもうひとつが自民党が通常国会に提出し、継続審議となっている児童ポルノ禁止法改正案だ。従来の法律では、児童ポルノの作成と配布を処罰するものだったが、改正案は「単純所持」が禁止され、しかも、漫画やアニメと性犯罪などとの関連性を「調査研究」して施行から3年後に「必要な措置」をとる条項が盛り込まれている。
日弁連子どもの権利委員会副委員長の川村百合弁護士が語る。
「現行法の児童ポルノの定義のまま単純所持を処罰することになると、自分の子供が裸で日光浴している可愛らしい写真を携帯電話に保存しているだけでも、見る人によっては『性欲を興奮させ又は刺激するもの』とされて、逮捕される危険がある。
また、宮沢りえさんの17歳のときの写真集『サンタフェ』も児童ポルノに当たり、昔買ったものを家に持っているだけで犯罪が成立するだろう。児童ポルノは人権を侵害するものなので規制は必要だが、単純所持まで犯罪とすると、児童ポルノ規制を口実に捜査権が乱用されることになりかねない」
ここでも児童ポルノ規制という国民が賛同しやすい名目の裏に権力者の企みが隠されている。考えればすぐわかることだが、被害者たる児童がいないマンガやアニメまで処罰しようというのは、権力者による言論統制、思想統制以外の何物でもない。ここまでくると、右派も左派もない目茶苦茶な権力暴走だ。
※SAPIO2013年11月号