アメリカの中華街が衰退の危機を迎えているようだ。中国本土の生活が向上して、米国に移住してゼロからの出発をして苦労をするのを嫌う中国人が多くなり、中国人移民が減少しているのだ。
さらに、アメリカの自治体も治安が悪い中華街のイメージを変えようと、周辺に高層ビルを建設し、ウォルマートのようなチェーン店化した大型マーケットを誘致するなど、中華街の存在基盤を脅かしていることも、中華街消滅の大きな要因となっている。
米国のアジア系移民の保護を目的とするNGO(非政府機関)「アジア系アメリカ人のための法律保護・教育基金会」(Asian American Legal Defense and Education Fund=AALDEF)によると、近年、米国の代表的な中華街であるニューヨークやボストン、フィラデルフィアといった米東海岸で代表的な中華街で、中国系市民の出生率が年々減少。その半面、中華街に居住する白人の市民の数が増えている。この3都市での白人全体の人口が減少しているにもかかわらず、である。
AALDEFでは「東海岸の中華街から中国系移民が出て行っているのだ。さらに、入ってくる移民もほとんどいなくなっているようだ」と独自の調査をもとに分析している。
中国人移民は19世紀半ばのカリフォルニア州におけるゴールドラッシュが始まりといえる。米国で一旗揚げて裕福になりたいとアメリカンドリームを抱いて、約2万5000人の中国人移民が同州に残り、中華街を形成した。
移民の多くは英語が話せず、中華街で生活の基盤をつくることが、彼らの伝統的なサバイバル術だった。
しかし、いまや中国人の多くは改革・開放路線の恩恵を受けて、かつてよりも豊かになった。わざわざ治安や労働環境、住環境が悪く、収入も低い米国の中華街に住んでアメリカンドリームを手に入れようとする中国人は極めて少なくなったのだ。
また、アメリカでは都市の再開発が進んでおり、粗末な平屋や2、3階建ての建物が多い中華街を整理して、その跡地にショッピングモールやオフィスビル、マンションなどを建設しようという計画も増えており、中華街衰退に拍車をかけている。
AALDEFは「アメリカにとっても、中華街は歴史や伝統と不可分であり、米国文化の一部だが、将来的に、米国内の中華街が消えていくかもしれない。これも時代の流れかもしれない」と指摘している。