中国の各種統計の信ぴょう性が薄いことは知られているが、では、なぜ、そうなるのか。中国の情勢に詳しいジャーナリスト・富坂聰が解説する。
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鉛筆をなめる――。
これは、数字を適当に誤魔化したり、都合よく手を加えることを指して使われる慣用句だが、中国の統計を話題にするとき日本人がよく使った言葉だ。
すでに世界経済大国と呼ばれるようになって2年。よもやいまさらそんなことはないと思っていたが、体質は相変わらずなようだ。
10月の末、中国国内の経済紙が〈GDPに関して数字を操作している疑いがある〉と報じて以降、大きな話題となっている。
国内メディアが騒ぐその根拠は、政府が発表したGDPと各省が公表した数字の総計とが合わないという単純な指摘だ。
中国の全31の省(直轄市、自治区を含む)のうちの28の省が提出したデータを集計してゆくと、1月から9月までの経済規模は42兆2000億元となり、それが政府の発表した数字を上回ってしまっているというのだ。
つまり、それに従えば中国のGDPは発表された額よりも、少なくとも3兆7000億元(約6億1000万ドル)多くなくてはならないというのだ。
背後にあるのは、地方政府による水増し報告の疑惑だ。自分の実績を高く報告するため各地が水増ししたことで、中央で集計するととんでもない額になってしまい、仕方なく中央政府が「鉛筆をなめた」というわけだ。
こういうのを見ていると、中国がいまだに自己評価として「発展途上国」と言っていることもうなづける。