ファミレスのメニューや持ち帰り用食品のラベルなど、身の回りの様々なところに「カロリー」が表示されている。細かく一ケタ単位で記されているので正確な数字だと思いがちだが、それは違う。
今回、取材班は実際に店頭に並ぶ食品、あるいはテイクアウト可能なメニューを購入し、専門の検査会社でカロリーの数値を検証した。すると、以下の商品で表示を大きく上回るカロリーが計測された。
【有名とんかつチェーンの「テイクアウト用ヒレカツ」】
●表示/365kcal→実測値/504kcal=約38%オーバー
【有名カレーチェーンの「ハンバーグカレー」】
●表示/929kcal→実測値/1114kcal=約20%オーバー
【大手ファミレスの「ミックスプレート(ハンバーグ、エビフライなど)」】
●表示/823kcal→実測値/909kcal=約10%オーバー
もちろん、同じレシピで調理しても食材の産地や季節などによってカロリーの数値がある程度変化するのは仕方のないことだろう。ただ、それを踏まえても超過幅はあまりに大きい。
外食や買い物のたびに数値に注目していた人には残念なお知らせだが、実は「カロリー表示」は極めてアバウトなものだ。健康増進法では表示から「プラスマイナス20%」までの誤差が許されている。つまり前述の3例で言えばアウトなのは表示から38%超過のトンカツだけ。カレーのように900kcal台の表示のものが1100kcal超であってもギリギリセーフなのである。
しかも、誤差が法で認められた範囲を超えていても特に罰則はない。「任意の表示なので消したり修正したりしてもらうよう注意していくことになる」(消費者庁食品表示企画課)といい、また消費者庁では何らかの情報提供がない限りは、特に表示が正確かの調査もしていないという。
もちろん、役所に強い権限を与えればいいというものではないが、国は表示義務化の検討も進めている。カロリー表示の実態を知らないと、消費者は不正確な数値に振り回されることになりかねない。
カロリー表示の数値は、【1】検査会社が実際に測定している場合、【2】文科省が作成した「日本食品標準成分表」をもとに栄養士が計算している場合の2パターンがある。
取材班は今回、食品の栄養成分分析やカビなどの微生物検査を業務とする「食品微生物センター」の協力のもと、市販の食品のカロリー表示を検証した。同センターでは専用のミキサーで食品を粉砕し、近赤外線を照射する最新の測定装置を用いてカロリーを計測する。食品を粉砕したサンプルからの反射光の波長の違いにより、たんぱく質や脂質などの成分を特定し、カロリーを算出していく。
この機器は従来より計測に時間がかからないため、商品開発のスピードを上げたい大手スーパーやコンビニで導入が進んでいる。そのせいか、今回、スーパーで売られる惣菜(餃子、ポテトサラダ)も検証したが、表示からの誤差はいずれも5%以内だった。
一方、冒頭の3例のチェーン店はいずれも【2】の方法で算出した値を表示していた。栄養士が計算する場合、食材が多くなると計算が複雑になり、油で揚げる場合は食材の形状や水分量を踏まえた吸油率を設定しなければならない。計算する栄養士によって結果にブレが出やすくなる。
●文/鵜飼克郎(ジャーナリスト)
※SAPIO2013年12月号