職種、経験で大きく異なるパートの給与明細は、見せても見せられても地獄だという。同僚との時給格差を知ってしまった時の激しい動揺、失望。「なぜ私のほうが低いのか」。明確な規定がある職場ばかりではない。
「互いの時給を教え合ったり、給与明細を見せ合うのは、トラブルの元です」
ファイナンシャルプランナーの福一由紀さんはそう話す。数字の差が、壁を作ってしまうからだ。時給はどうやって決まるのか。
「能力差によるものです、といいたいところですが、実際には微妙。要は、担当者の腹づもりひとつなんです。同じように仕事をしているのに、50円、100円違うなんていう例はざらにあり、はっきりした根拠はありません」(福一さん)
それゆえ時給の違いが職場のトラブルを引き起こす。それでも聞きたくなり、知りたくなるのが人情。
「このあたりは、パート特有の現象だと思います」
そう話すのは、ダイバーシティ・ラボ代表で、パートの問題に詳しい吉田珠江さんだ。男性の正社員同士では、互いの給与を知ろうとしない。
「長期にわたってお勤めしていると、上下関係が生まれたり、差が開いていったりすることを、受け入れていくんですね。一方でパートでは、短期の仕事が評価されます。だからほかのパートさんと比べて自分はどうなんだろう、と知りたくなるんです」
もし、自分の時給が低いと知ってしまったら?
「謙虚になってみる必要はあると思います」と言うのは福一さんだ。
「そして、自分に何が足りないのか、他の人はどうして時給が高いのかを考えるんです。冷静になって考えてみて、それでもおかしいと思ったら、時給を決めている人と話をしてもいいでしょう。ただし、『どうして私は低いんですか!』と言うのではなく、『どうすれば上げてもらえますか、何が足りませんか』と聞くのです」
なるほど。時給差の根拠は決して明確ではない。さりとてゼロではない。まずはわが身を振り返ってみること。低姿勢であることが大切ということ。吉田さんは、雇う側の立場に立てば、どんな人の時給を上げたくなるかは想像できるはず、と話す。
「やってほしいことをやってくれる人の時給は上げたくなりますよね。例えば、シフトに柔軟に対応できるとか。もしそれが難しくても、例えば顧客の目線で品揃えの提案をするとか、別の部分で貢献すればいいんです」
協力されてイヤな思いをする人はいない。特に男性のマネジャーは、パートの女性に遠慮して、してほしいことをはっきり言わない傾向にあるという。
「いちばんいいのは、お互いにコミュニケーションをとることですよね」(吉田さん)
※女性セブン2013年11月21日号