有名ホテルや旅館で次々明らかになった食品偽装問題。今回多かったのが、バナメイエビを芝エビと表記したことに代表されるブランド食材の偽装だ。食品ジャーナリストの郡司和夫氏がいう。
「車エビがブラックタイガー、伊勢エビがロブスターだったことなどが公表されていますが、エビだけでなくカニも“ブランド偽装”の定番です。カニの王者タラバガニは、仕入れ価格が10分の1で済むアブラガニで多く代用されています。甲羅の中央部のトゲの数が違うので見分けがつきますが、むき身で出されると専門家でもわからない。
松葉ガニや越前ガニと呼ばれるズワイガニは、一般的にオスのことをいいます。一方のメスはサイズが小さく値段も10分の1以下。味はかなり違うので、酢の物にするなど必ず調理されて出されています」
他には“地鶏”もよく偽装されているという。地鶏は農水省により品種や飼育の方法、期間などが細かく規定されており、全国でも名古屋コーチンや比内地鶏など約60銘柄しか存在していない。生産コストも高く、ほとんどが専門店や高級料亭で消費されている。
「ホテルなどで地鶏としてメニューに載っているもののほとんどは、“銘柄鶏”と呼ばれるもの。地鶏と違い親の規定もない。地鶏とブロイラーの中間といえる鶏肉です。悪質なホテルでは比内産の鶏を“比内鶏”と表記している。これは、消費者に比内地鶏と誤解させようとしているのです」(郡司氏)
このように表示自体を利用して、消費者のミスリードを狙っているものも少なくない。食品の管理に詳しい「食品安全教育研究所」代表の河岸宏和氏がいう。
「たとえば“鮮魚”と書かれていたら、新鮮な魚を想像するかもしれませんが、食品表示を規定するJAS法では、冷凍保存されたものも含まれるのです。似たような話で“旬”という言葉は“まさに今採れたもの”を連想させます。
しかし、今の時期、メニューに“旬のカキフライ”と書いてあったとしても、カキがフライに適したサイズになるのは1月から3月ぐらいのはず。つまり、そのカキフライは半年以上前に獲れたカキを冷凍保存していた可能性が高い。もしかしたら、去年、一昨年のものかもしれない。法律上、“旬”がいつの年の旬のことなのかは証明する必要がないのです」
※週刊ポスト2013年11月22日号