「国の地震研究者は南海トラフ地震のことばかり指摘するが、実はこちらのほうが危ない」
琉球大学の木村政昭名誉教授(地震学)がそう指摘するのは、伊豆半島の東側から東に伸びて日本海溝とつながり、そのまま南に向かって走る「伊豆・小笠原海溝」だ。
「伊豆・小笠原海溝は東日本大震災を起こした日本海溝とつながっています。三陸沖の海溝に長い年月をかけて蓄積された歪みは東日本大震災で解消されましたが、伊豆・小笠原海溝の周辺には依然ストレスがたまった状態。実際、この海域では1960年以前に頻繁にM7クラスの地震が記録されていますが、1960年以降はピタリと止まっており、不気味な状況です」(木村名誉教授)
現在、伊豆・小笠原海溝を震源とした地震への注目度は決して高くないが、木村名誉教授は“発生間近”と予測する。
「誰も伊豆・小笠原海溝については言及しないが、東日本大震災が発生するまで、三陸沖での巨大地震の可能性も多くは語られていなかった。私は2015年までに、最大M8.5の伊豆・小笠原地震が発生すると予測しています」
つまり、あと1年あまり。今この瞬間に来てもおかしくないというのだ。では、ここで巨大地震が発生したらどうなるのか。
「この海溝でM8.5の地震が発生したら、伊豆・小笠原諸島は震度7の揺れに襲われるでしょう。首都圏や本州沿岸部でも最大で震度6程度が想定できます。より深刻なのは津波です。この海域にあるフィリピン海プレートは柔らかく、地震時の跳ね上がりは東日本大震災の比ではない。
最悪の場合、房総沖から西日本沿岸にかけて、東日本大震災を凌駕する30m級の大津波に襲われる可能性もあります」(木村名誉教授)
武蔵野学院大学の島村英紀特任教授(地震学)も、首都圏を津波が襲った時の恐ろしさを強調する。
「津波が発生すると地下鉄や地下街はとても危険です。地下に大量の水が浸水し、地下街で溺れてしまうこともある。特に川の下を走っている地下鉄では、車内まで水が入ってくることも考えられます」
また名古屋大学院工学研究科の川崎浩司准教授(海岸工学)も次のように話す。
「国や自治体が対策をすることが必要ですが、お金や時間がかかります。揺れの大きさにかかわらず、常に“津波が来るかもしれない”と自覚して行動することが何より大切。少しでも津波の可能性があれば、すぐに高所まで避難しましょう」
※女性セブン2013年11月21日号