「アルコールのカロリーは体に吸収されないから太らない」とは酒飲みが好むレトリック。「エンプティカロリーだからいくら飲んでもオレは太らないんだよ!」と酒飲みは言うが、その真偽やいかに、ジャーナリストの鵜飼克郎氏がレポートする。
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山王病院の堀江義則内科部長(消化器内科)の説明。
「かつてアメリカで、怪我をして退役した元軍人を二つの集団に分け、病院食に加えて一方にはアルコールを、他方には同じカロリー分のチョコレートを食べさせるという研究があり、チョコレートを食べた集団にのみ体重増が認められた」
アルコールは1gあたり約7kcalで、これはたんぱく質や炭水化物(いずれも同約4kcal)よりも高いが、「吸収されたアルコールは主に肝臓で代謝され、水と二酸化炭素になって排出される。その過程で生体維持に必要な栄養素が産生されず、身体に蓄積されない」(金沢医科大学の高瀬修二郎・名誉教授)から前述のような研究結果が得られる。
ただし、まったく太らないという考えも間違いである。
「アルコールが肝臓で消化される時に、脂肪代謝を阻害する。脂肪酸をエネルギーとして使えないため、中性脂肪として肝臓の中に蓄積されていく。代謝阻害以外にも、肝臓がアルコールを分解する過程で、中性脂肪の合成を促す経路があることもわかってきた。
『アルコールのカロリーの3分の2は体内でエネルギーとして利用される』とよく言われます。これは3分の2が熱になり、その間、体温維持のために普段使っているエネルギーが使われないという意味です。
ただし、あくまでビール1本(20g)程度の飲酒では理論的にそうなるという話で、大量飲酒の際にはその利用割合はもっと少なくなりますし、また、この説には今のところ医学的な証明はありません」(前出・堀江氏)
さらにはビールや日本酒、ワインといった醸造酒の場合、アルコール由来でないカロリーが含まれる。原料である穀物や果物の糖質のカロリーは酒に含まれていても「アルコールのカロリー」ではないから普通の食べ物と同じように蓄積される。ビールの場合、全体の30%強が穀物由来の「普通のカロリー」である。ウイスキーや焼酎などの「アルコールのカロリー」しか含まない蒸留酒とは分けて考える必要がある。
また、アルコールには食欲増進効果がある。つまみにどんどん手が伸び、肥満の原因となる。
※SAPIO2013年12月号