中国の不動産バブルは、「魂の帰る場所」にも大きな影響を及ぼしている。中国に詳しいジャーナリスト・富坂聰氏がレポートする。
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中国都市部に見られる不動産価格の凄まじい値上がりは、すでに日本でも有名である。中国でいう不動産価格は、すなわち上物を除いた土地の使用料のことだが、永久賃貸――70年の賃貸――を地価としたみなした土地の価格は、依然としてほぼすべての都市で値上がりを続け、北京などでは15%近い値上がりとなっているのだ。
こうした傾向は中国人の生活にさまざまな影響を及ぼしているが、今年、その最も大きなものの一つに数えられるのが墓地問題だ。
『人民日報』日本語版によれば、〈北京の大興天堂公営墓地を例に上げると、高級霊園墓地の販売額はすでに最高145万元(約2278万円)に上り、北京豊台区思親園骨灰林にある5つの「亭子墓」では、すべてが200万元(約3142万円)に達している。富裕層をターゲットにした値段とはいえ驚きである。
値上がりのスピードは納骨の費用にまで及んでいる。
今年テレビ番組〈経済半小時〉が伝えたところによると、北京の中心部から約30キロの「天慈公墓」では、2000年には6500元だった納骨が、2009年には2万元まで値上がりしたという。
また同じように庶民が利用する墓地で墓を購入した場合にはどうなるのか。
同番組は、骨壺が2つ置けるタイプで下限が3万6000元(約54万円)から上限が45万元(675万円)。6つおけるタイプでは60万元からになるという。
ない袖は振れない――。というわけなのか、中国ではいま墓を諦めて散骨などが急速に広がり始めているという。
かつて魂の帰る場所とされた墓の不在は、中国人の伝統を大きく変えることになりそうだ。