「日本人は胃が弱い」「胃の病気はサラリーマンの宿命」と昔からいわれてきたが、「それは単なる体質やストレスのせいではなく、“ピロリ菌”のせいかもしれません」と、東海大学医学部・古賀泰裕教授はいう。「人口の3分の1、約4000万人が感染しているピロリ菌は長年にわたり、日本人の胃に巣食い、ダメージを与え続けてきたのです」と語る古賀教授によれば、
「ピロリ菌は人間の胃だけに棲むという、めずらしい特徴をもった細菌で、これに感染すれば、100%の確率で慢性胃炎が起きます。慢性胃炎になると、胃粘膜が腫れる、小さなびらんをくり返すなど、つねに荒れた状態になるのです。自然に菌がなくなることはないため、5歳で感染した50歳の人なら、45年もの間、慢性的な胃炎を抱えていることになります」
とのこと。そこでピロリ菌に関する基礎知識を確認しておこう。
【問1】
ピロリ菌は胃にどんな影響を与えるのか?
【回答】
「胃の3大病といえば、慢性胃炎・胃潰瘍・胃がん。そのすべてにピロリ菌が関わっています。ピロリ菌に感染すると、例外なく胃炎が起こります。そこにダメージが加わることで、胃潰瘍や胃がんが起こりやすくなります」
ピロリ菌が胃の細胞から栄養素を吸うと、細胞に異変が。その細胞を免疫系が攻撃することで、炎症=胃炎が起きる。
【問2】
ピロリ菌はどのように感染するのか?
【回答】
「かつては井戸水などを経由して感染していたため、上下水道が整備されていなかった時代に幼少期を過ごした人は高い割合で感染している恐れがあります。例えば50代では約半数以上、40代では約30%が感染していると考えられます。
現在では、感染者が口に入れた食物を子供に与えたときにピロリ菌を移してしまうケースがほとんど。子供は胃酸が弱く、抵抗力が乏しいので感染しやすいのです。抵抗力が強くなる6~7歳以上では感染することはありません」
【問3】
ピロリ菌に感染すると胃がんを発症しやすくなる?
【回答】
「ピロリ菌の感染者・非感染者合計1000人以上を約10年間にわたり追跡調査したところ、非感染者では胃がん発症者が0だったのに対し、感染者では2.9%に胃がんが発症したという報告があります。この数字は日本人の胃がん罹患率と見事に一致します。つまり、ピロリ菌は胃がんの最大のリスク要因といえるのです」
※週刊ポスト2013年11月29日号