今まさに国会審議が大詰めを迎えている「特定秘密保護法案」。与野党による修正協議が行われ、みんなの党は与党の修正案を了承した。
7月の参院選でも争点にならず、いつのまにか成立間近となったこの法案。安倍晋三首相(59才)はやたらと成立を急いでいるが、この法案の裏に潜む恐ろしさに気づかないままでいると、とんでもないことになる。実は、私たちの生活とかかわる部分も多いのだ。
そもそも「特定秘密保護法案」とは、政府が保有する「防衛」「外交」「スパイ活動の防止」「テロ防止」に関する情報のうち、国の安全保障にかかわる重要なものを、閣僚など、「行政機関の長」が「特定秘密」に指定し、情報が外部に漏れることを防ぐ法案のこと。
特定秘密を扱う公務員、警察官、関係する民間業者が秘密を漏らせば、最高10年の懲役。秘密漏洩を教唆(そそのかし)した者も最高5年の懲役となる。
「国の秘密情報なんて、私の生活には関係ない」と思うかもしれないが、実はそうではないのだ。
「防衛、スパイやテロなどは一般市民から遠いイメージですが、実は私たちの生活に密接にかかわる法案なんです」
と語る日弁連の特定秘密保全法制対策本部事務局次長・齋藤裕弁護士によれば、こんなケースが考えられるという。
「例えば『外交』では、外国政府や国際機関との交渉のうち、“国民の生命や身体の保護に関する重要な情報”が特定秘密になります。ですから、メタミドホス入り餃子やBSE(牛海綿脳症)、遺伝子組み替え食品など、国民の健康にかかわる食品の輸入に関する外交交渉も含まれる可能性があります。
米国から『BSEなんて心配ないから、もっと米国産牛肉を買え』と迫られ、弱腰で行う交渉を特定秘密に指定できる。市民が食の危険を知らされないばかりか、義憤を抱いた農水省の役人が、『国民の健康が危ない』と内部告発すると、法律違反で逮捕されることもあります」
さらに「テロ防止」の項目にもこんな危険性が。
「テロ組織が狙うとして、原子力発電所の情報も特定秘密の対象となりえます。現在問題となっている汚染水タンクや福島第一原発4号機の使用済み核燃料などの情報はもちろん、また原発事故が起きた場合も、秘匿されるかもしれません」(齋藤弁護士)
そもそも、「特定秘密」の内容が曖昧すぎると呆れるのは、ノンフィクション作家の澤地久枝さんだ。
「法案をよく読んでも、特定秘密がどこまでを対象とするか見えず、国家権力が好き放題に運用できる内容です。国民が『何が秘密ですか』と聞いても、『それは秘密』と言い逃れできる、ひどい法案です」
10月25日に国会に提出された法案を読むと、特定秘密となるのは、「国際機関からの情報“その他”の重要な情報」など、“その他”という表現が実に36か所も! これでは、確かに何でも特定秘密にできてしまう。
※女性セブン2013年12月5日号