韓国在住日本人は「韓国のテレビや新聞などを見なければこんな楽しい国はないんだがな……」とよく口にする。最近はこれに「ネット」が加わるが、それほど韓国メディアには反日が溢れている。
日本支配(1910~1945年)が終わってすでに70年近くになる。しかも経済発展で今や世界有数の国になっている。日本との往来も多い。現代の日本情報も入っている。当然、人々の反日感情も後退し、日常生活ではまったくといっていいほど反日を感じない。しかし、メディアの反日とそれに乗っかる政治・外交の反日が突出しているのだ。
韓国人自身も自嘲気味によく言うが「韓国は世界でもっとも日本の影響を受けながら、もっとも日本をバカにし、もっとも日本の悪口を言っている国」である。韓国の安倍政権に対する「極右・軍国主義復活」非難の異様な反日キャンペーンは安倍政権スタート以来、今も続いているが、新たな日本非難の材料となっているのが「フクシマ原発汚染水」問題だ。
メディアが汚染水問題を針小棒大に報じるために、日本産の輸入魚はもちろん、韓国産水産物にも風評被害が広がっている。韓国政府がいくら国産は安全だといっても聞かないのだ。
5年前には米国産牛肉を巡ってMBCテレビが「韓国人の体質は狂牛病にかかりやすい」との虚偽報道を行ない大規模な反米・反政府デモが爆発、李明博政権が倒れかかったことがある。韓国人はウワサつまりウソに弱い。
本来はメディアが沈静化のため正確な報道をすべきだが、逆に風評を煽っている。汚染水問題では「タンクに割れ目」とか「バルブが緩んだ」「浪江町議会が安倍批判決議」までトップニュースで毎日のように伝えている。まるで福島県にいるようだ。
昔から日本が困れば韓国は喜ぶ。日本に支配されたという歴史的被害者意識からくる「ひねくれ」だが、メディアの過剰報道には懸念より快感が窺われる。しかし、フクシマ過剰報道では自国民の放射能恐怖症を拡大させ、水産業界大打撃で自らの首を絞めることとなった。
(文/産経新聞ソウル駐在客員論説委員 黒田勝弘)
※SAPIO2013年12月号