小泉純一郎元首相が脱原発を訴えたことで、改めて原発の是非が議論になっているが、日本が、即ゼロ原発となった場合、何が起きるのか。
経営コンサルティング会社『A・T・カーニー』によると、脱原発となれば9年間で電気代が7割アップするという試算もある。
総務省の家計調査によれば、平均的な電気代(2013年9月の2人以上の世帯)は、月1万1736円なので、1万9951円、つまり8215円のアップになる。年間に換算すれば9万8580円の負担増だ。
また、廃炉費用は、電気料金に積立てされているが、経産省は、原発を2013年度中に全廃すれば、電力会社10社で4.4兆円の損失が出ると試算。うち、東京電力や北陸電力など6社が「債務超過」になる。つまり破産してしまう。
使用済み核燃料の問題も深刻だ。昨年9月、科学者でつくる日本学術会議は、高レベル放射性廃棄物の処分について、「最終処分場の決定を先送りにして、廃棄物の量の上限を決めて暫定的に保管する」と原子力委員会に提言した。
最終処分場が決まるまで、廃棄物処理は「乾式貯蔵」という方式がとられる見込みだ。これはヘリウムガスと、厚い金属性の包みで、廃棄物を覆って地上に保管するもので、ここで何万年も保管し続けることになる。この保管施設に必要な広さは、東京ドーム80個分といわれている。
ゼロ原発となっても、家計には厳しく、廃棄物の問題もすぐには解決しない−−だが、実はこのまま原発を維持しても、激しい“痛み”は伴う。元経産省官僚で古賀茂明政策ラボ代表の古賀茂明さんは言う。
「日本の原発のコストは安いといわれてきましたが、それは安全基準が欧米よりはるかに緩いからです。大震災が再び起きたら、福島より酷い惨事が起きるかもしれない。かといって、欧米並みの基準にすれば、地震や津波やテロ対策など、膨大な追加投資を余儀なくされます。
新たに建設することはもちろん、現状の日本の原発は動かすことさえできません。そもそも電力会社が事故の損害賠償を自分で払えないなら、保険をかけるべきです。でも、その保険料は莫大な額になる」
実際、アメリカでは、ここ30年間、新規の原子力発電所は建設されていない。2012年10月には、電力会社ドミニオンが、コスト高を理由に、ウィスコンシン州内の原発停止を決めた。
自民党の公約にある「安全と判断された原発」を再稼働させるのであれば、追加投資や保険料の負担は国民にかかり、電気代が大幅に値上がりすることになるのだ。
※女性セブン2013年12月12日号