忘年会・新年会シーズン真っ盛りだ。繰り返されるお酒が原因の失敗や不可思議な現象。科学的な視点でその仕組みを究明してみる。たとえば、飲み会の後の「締めのラーメン」。翌日後悔したことが何度もあるのにそれでも食べたくなるのはなぜか。
まず、「酒を飲むと満腹中枢が麻痺する」という理由がある。通常、食事をすると小腸から吸収された糖質が肝臓で分解されグルコースになり、血液中に放出されて血糖値が上がる。脳の視床下部にある満腹中枢は、血糖値が上がるとはたらきが活発になり食欲が失われる。
ところが、酒を飲むと肝臓は糖質よりもアルコールの分解を優先する(人体はアルコールを異物と認識するので、「解毒」が優先される)。そのため血糖値が上がらず、満腹感が得られない。つまみをたくさん口にしたのに、「まだ締めが食べられるかも」と思うのはこのためだ。
他にも理由がある。医学博士で健康科学アドバイザーの福田千晶氏の解説。
「肝臓がアルコールを分解するのにエネルギー(糖類)が必要です。そのため消化のよい炭水化物を欲する傾向があります。また、アルコールには抗利尿ホルモンの分泌を抑える利尿作用があります。飲んだ分の最大で1.5倍が排泄されるため、体は失われた分の水分を欲します」
麺類(炭水化物+水分)を体が欲するのは道理なのである。摂取されたアルコールは主に肝臓でアルコール脱水素酵素(ADH)のはたらきによって酸化され、アセトアルデヒドになる。さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって酸化されて酢酸となるが、ADHやALDHのはたらきを助けるのがイノシン酸という補酵素。これは動物性の旨味成分の一種で、とんこつスープなどに多く含まれる。
まだある。 「ビールにはカリウムが多く含まれます。人間は体内のカリウムとナトリウムのバランスを一定に保とうとする機能があるので、ビールを大量に飲むとナトリウム、つまり塩分を欲するようになります。そうした理由から『飲んだ後にラーメンが食べたくなる』という現象が起こるのです」(福田氏)
※SAPIO2104年1月号