年末を控え、霞が関ではいよいよ、予算編成が本格化しているが、その裏で税制改正も動き出している。本誌名物の覆面官僚座談会では財務省中堅官僚A氏、経済産業省中堅官僚B氏、総務省ベテラン官僚C氏、防衛省若手官僚D氏に集まってもらい税制改正をめぐる裏事情を語ってもらった。〈司会・レポート/武冨薫(ジャーナリスト)〉
──霞が関にとって、年末の予算編成はこれまで種を蒔き続けてきた消費増税の収穫になる。だから各省は目の色が違っている。
経産B:それが違うんだよ。われわれがより重視しているのは、予算編成に先立って行なわれる税制改正です。
防衛D:経産省は経団連が求める法人減税を実現させたいんでしょう。
経産B:それもあるが、財務省は予算編成にあたって2010年6月に閣議決定された「歳出増または歳入減を伴う施策の導入時には、恒久的な歳出削減・歳入確保措置により、安定的な財源を確保する」という「pay as you go 原則」を盾に減税や新規事業を認めようとしない。「財源を探してこい」というわけだ。
かといって他の政策は切れないから、成長戦略とか、特別枠で設定された予算を各省が奪い合うことになる。ところが、今年は事情が変わった。各省が新たな増税で財源を得ようと走り出した。
財務A:総務省は地方財源である軽自動車税の引き上げや商用車への課税強化、農水省は林業対策のために温暖化対策税(ガソリン税)の増額や「森林税」の創設、環境省は自動車重量税の強化を要望している。経産省が企業の交際費減税とセットで検討している、1人1万円を超える飲食に課税する“グルメ税”は、消費税に加算して負担が増えることになるから、個人的には筋が悪いと思うけど。
──増税計画のオンパレードだ。第一、自動車取得税は消費税引き上げのかわりに廃止が検討されていた。
総務C:自動車取得税は地方税だから廃止されれば地方の財源が減る。今年1月の与党税制大綱で自動車税制について「地方財政へは影響を及ぼさない」と決定しているから、軽自動車税を上げるのはやむを得ない。
経産B:これは消費増税効果なんだ。大増税をやれば内閣のひとつやふたつはつぶれるといわれていたが、安倍政権が来年4月からの消費税8%への引き上げ実施を決めたとき、逆に支持率が上がった。あれだけの大増税でも国民は怒らない。財務省のメディア工作があったとはいえ、霞が関には大きな驚きだった。
防衛D:各省はそれを見て、消費増税で支持率が上がるなら、軽自動車税や環境税を多少、引き上げるくらい問題ないと“柳の下のどじょう”を狙っているわけですね。予算獲得や減税のために他の予算を削るのではなく、てっとり早く各省一斉に増税で新規財源を生み出そうとしている。わが省にも“尖閣防衛税”があればよかったんだけど(笑い)。
※週刊ポスト2013年12月20・27日号