介護保険の保険料は、居住地(市町村)によって最大3倍近い地域格差がある。介護施設が多い地域は高く、少ない地域は安いからだが、年々、施設数は増え、保険料は全国的に上がり続けている。
制度の導入(2000年)当初、厚労省の役人は、「小さく産んで大きく育てる」と保険料を低く抑え、介護認定を甘くして対象者を増やし、さらに2005年改正では「介護予防事業」を新設して元気なお年寄りに介護保険のカネを使って筋トレさせ、トレーニング器具など介護機器利権を太らせた。
だが、介護対象者が増えて財政難になるや一転、介護認定を厳しくして支出を絞り、今回の臨時国会で成立した社会保障プログラム法ではついに、軽度の「要支援」と認定された高齢者は介護保険制度ではなく、市町村に独自の支援事業を行なわせる方針を決めた。
「厚労省は筋トレ利権のために介護保険の金を使わせた挙げ句、制度運用の失敗を自治体に尻ぬぐいさせようとしている。このやり方では市町村の負担がさらに重くなって介護サービスや保険料の地域格差がもっと広がる」(介護施設団体の幹部)
東日本大震災では、役人と民間人の「命の値段」の差が明らかになった。震災犠牲者の遺族に支払われた弔慰金は、死亡者が生計維持者なら500万円(その他の人は250万円)となっている。この額は全国民共通の1階部分で、勤務中に死亡した民間サラリーマンや自営業者には、労災保険から遺族特別支給金最高300万円が給付される。これが民間人の2階部分に相当するので、合わせて800万円だ。
それに対して、公務員の場合、1階部分の500万円と地方公務員災害補償法で民間の労災保険と同じ300万円が支給される他に、「遺族特別援護金」として最大1860万円が加算される制度がある。合計は2660万円。民間人の3倍以上となるのだ。
この格差について地方公務員災害補償基金本部は、「民間では勤務中に死亡した社員には労災とは別に企業から見舞金が支払われる。それに相当する。金額は民間企業の支給額を人事院が調査して決めている」と、制度はあくまで“民間並み”だと主張する。
しかし、企業の人事労務に詳しい社会労務士は「1000万円以上の見舞金を払う企業は僅かな大企業に限られる」と指摘する。ごく一部の大企業を例示して「民間並み」と言い張るのは役人の常套手段だ。
※週刊ポスト2014年1月1・10日号