野球評論家の江本孟紀氏は現役時代「ベンチがアホやから野球がでけへん」と言葉で物議をかもした。当時は「アホ」という言葉に親しみと温かさが備わっていると伝わらなかったが、上方漫才が全国放送されるようになり今では知られるようになった。「アホ」が意味するところの認知が高まった今だからこそ、2013年の日本球界の「アホ」なこととして、選手のパフォーマンスとファンの責任について江本氏に語ってもらった。
* * *
最近は野球が幼稚になっています。阪神は、ホームランを打った後にベンチ前でパフォーマンスをするが、ああいうファンに媚びるようなことはそろそろやめた方がいいですよ。
最近流行りの「引退試合」も同じですね。美談ばっかり追いかける、今の球界の気持ち悪い風潮の最たるものです。あんなもの我々の時はなかった。ヤクルトの宮本慎也の引退試合とか、あんなのチームが宮本を使って最下位の批判をかわし、客を呼んだだけでしょう。
そんな野球を観に行くファンにも責任があると思います。ヤクルトが最下位なのに神宮が満員になっていたので、おかしいなァと思ったら、皆がグリーンのレプリカユニフォームを着ていた。最近はどこの球団でもやってますけど、要は物に釣られて来ただけなんですよ。年間トータルで見れば客は来ていないでしょう。一時的でも客が来ればいいや、なんていう球団の姑息な手段にまんまと乗っているだけなんです。
もっとファンは勝ち負けにシビアでなければならない。唯一こだわってるのは巨人ファンくらいですよ。
大量リードされていると7回で帰ります。それが阪神ファンは10点差で負けてても、風船を飛ばすために残っている。多くのファンはこれと同じで、風船飛ばしたり、肩組んで一緒に踊ったり、あれが楽しみだから、勝ち負けはどっちでもいい。7回には皆フーフー必死で風船膨らまして、試合なんか観てないでしょう。
僕ら解説陣は、甲子園じゃ7回は陰に引っ込むんです。知らない人のツバが降り注ぐんですから。
※週刊ポスト2014年1月1・10 日号