ついつい頼んでしまう「新・国民食」の宅配ピザだが、ほとんどの注文客は宅配ピザ店の店内を見る機会はないだろう。
実は「時間との勝負」であるためオペレーションは日々進化しているのだ。
「注文の電話を受けた人間が画面に入力しているのを見ながら、調理担当がすぐにピザを作り始めます。電話を受けてからピザが出来上がるまでだいたい5~7分。そのくらいで調理しないと、『30分以内にお届け』という目標を守れません」(大手宅配ピザチェーンのアルバイト)
スピーディな調理を可能にするため、ベルトコンベア式のオーブンなどが開発されてきた。高温のオーブン内をピザが移動していくので次々と注文が入っても連続投入できるシステムだ。
各チェーンとも「インターネットで注文すると5%オフ」といったサービスを提供しているのは、ネット注文ならオーダーが入ると厨房に設置された機器から受付伝票がプリントアウトされ、そのまま調理に移れるため、人手も時間も節約できるメリットがあるからである。
宅配できる「場所」も広がっている。
ピザハットでは、注文客がスマートフォンで専用のアプリをダウンロードすれば店側がGPSで所在地を確認し、自宅以外の場所でも届けてもらえる。
「既存店舗の配達エリアに含まれる地点でしたら、お花見会場でも運動会の校庭でも正確にお届けできます」(ピザハットを運営する日本KFC広報)
ただし、多様化するニーズに対応するために、アルバイト店員の苦労は増えている。
「30分以内に配達しないと500円割引券をお渡しするというサービスをやっていると、居留守を使って30分過ぎるまでドアを開けないお客さんがいて困ります。それでも割引券を渡していますが……。
最近は店舗に受け取りにくると2枚目が割引になるサービスが浸透したので、来店した方への接客に時間がかかってしまっています。肝心の宅配が遅れそうになることがあるんですが、オーナーは『バイトは増やせない』と言うばかり。
あとは忙しい時ほど気が重くなる環境なんです。雪の日や台風の日は注文が増えますが特別手当なんて出ませんし、1年で注文が多い日はクリスマス・イブ。こっちは一人寂しくバイトしているのに幸せそうなカップルや賑やかなパーティに届けなきゃいけないんですから……」(前出のアルバイト)
※SAPIO2014年1月号