販売部数の低迷に喘ぐ大手新聞各社は数多くの副業に手を出している。そうしたサイドビジネスの中には、権力を監視するメディアの在り方として首を傾げたくなるものがある。ジャーナリスト・武冨薫氏が指摘する。
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朝日新聞が関西のビジネス中心地、大阪・中之島に建設中の高さ200mのツインタワー(総事業費約1000億円)。リーマン・ショック後の不動産不況の中で工事が進められ、「朝日の賭け」と言われたが、2012年11月に完成した1棟目の「中之島フェスティバルタワー」(地上39階、地下3階)には朝日新聞大阪本社と2700席の音楽ホールが入り、16階から36階までのオフィスフロアはイタリア総領事館などのテナントでほぼ埋まっている。
同社は向かいの旧大阪本社ビルを解体し、2014年夏から2棟目のタワー(地上42階、地下4階)に着工、完成は当初の計画を1年前倒しして2017年を目指す。新タワーは25フロア分のオフィスのほか、上層階には高級ホテルを誘致する計画だ。
「大阪では経済の地盤沈下で梅田(JR大阪駅前)の巨大再開発でさえテナント誘致で苦戦している。当初、朝日の2棟目のタワーは延期になるんじゃないかという見方が強かったが、中之島フェスティバルタワーはテナントの募集賃料が梅田の一等地に匹敵する1坪あたり2万8000円でも埋まった。そこで新タワーを1年前倒しで建設するというんだからたいへんな羽振りだ」(地元の不動産業者)
成功の秘密は国の「特区制度」の利用にある。
同社の旧大阪本社など老朽化したビルのツインタワーへの建て替え事業は小泉内閣時代に創設された「都市再生特別地区」に指定され、朝日側の申請に基づいて容積率が従来の1000%から1600%に大幅に緩和された。それによって同じ敷地に従来の1.6倍の延床面積のビルを建てることが可能になり、収益をあげるためのスペースが増え、資産価値は大幅に上がった(もともとのビルはそれぞれ13階、10階建て)。
同社の賃貸事業は売上が140億3600万円で利益が23億2600万円(2013年3月期)。利益率は本業の新聞出版事業(売上4431億5500万円、利益85億7100万円)を大きく上回る。子会社による人材派遣業や保険代理業、文化事業など朝日新聞が持つ様々な副業の中でも不動産事業は収益の柱だ。国の政策の恩恵をフルに受けて不動産ビジネスを本格化させたのである。
※SAPIO2014年1月号