5~6年後をメドに現行の大学入試センター試験が改編され、「ペーパーテスト重視の点数主義から面接重視の人物本位へ」「複数回チャレンジ可能」を柱とする新制度へ変更される見通しだ。しかし、大前研一氏は間違った入試改革が日本を“衰弱死”に追い込むと話す。以下、大前氏の解説だ。
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18歳人口減少に伴い各大学が学科試験ではなく面接や小論文などで合格者を選抜する推薦入試やAO(アドミッションズ・オフィス)入試の導入を推進したため、今や大学生の半数が推薦入学者という事態になっている。
その結果、とんでもない“未熟児”が大学に入ってきている。
実は、私が学長を務める日本初のオンライン大学「ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学」は、インターネットによる遠隔教育プログラムを提携高校に提供しているが、東京都内の一流大学からもその数学の教材を提供してほしい、という要請を受けている。
理由を聞いてみると、推薦入試・AO入試などで大学に入学しても高校卒業レベルの学力がない学生が多く、とくに数II・数IIIおよび、これらの科目で習う微分積分を前提とする物理が不可欠な理工系学部で大学の授業が成り立たない状態になっているのだという。
その補習用に、理工系学生に先の高校の教材を使って「大学の授業」が開始できるようにしようというのが実態なのだ。
このうえ「点数主義から人物本位へ」と言って、推薦入試・AO入試だけでなく一般入試でも面接を重視するようになったら、さらに低学力の大学生だらけになるのは火を見るよりも明らかだ。
先進国が理数系に再回帰している中で、そこから「世界に出て競争力のある人材」など生まれるわけがない。
※週刊ポスト2014年1月1・10日号