新日本プロレスが一時の人気低迷から脱却し、今や若者のデートコースに「プロレス会場」が組み込まれるほどなのだという。仕掛け人はトレーディングカードなどを手がける「ブシロード」の木谷高明社長。2012年に新日本プロレスを買収し「世界一のプロレスカンパニーを目指す」と豪語した木谷氏に、プロレス人気再燃の理由を尋ねた。
「うちが子会社化する前の新日本プロレス(以下、新日本)の売り上げは11億4000万円。それが今期は25億円まではいくでしょう。この2年間でお客さんも倍になりました。1月4日の『バディファイトPresentsレッスルキングダム8 in東京ドーム』は去年の倍以上のスピードでチケットが売れていますから。ふふふ。どうやったと思います? 実はね、流行らせるために“流行ってる感”を出したんですよ」(木谷氏。以下「」内同)
──どういう意味でしょうか。
「今から説明しますよ。人が物を欲しくなる条件というのがあって、“近い将来もっと盛り上がっているだろう”と思ったら人はそれを買うんです。欲しくならない状態はその逆。これまでのプロレスは流行っていなかったから人気が低迷していった。
子会社化してからはTVCMや雑誌で広告を出しまくりました。電車の車体広告と駅の看板広告など、大きな大会の前にドカン!と打って出た。
これらの狙いは会話をさせること。今の日本に隠れプロレスファンっていっぱいいるんですよ。ただ、彼らは堂々とファンだといいづらくて隠してた。だって流行ってないから。だけど電車でデカデカと広告が出ていれば“今朝、山手線で見たんだけど”って話がしやすいじゃないですか」
──プロレスオタクだと思われたくないファンもいますよね。
「コアなユーザーがライトなユーザーを拒絶していたがために、プロレスが衰退していった面もありました。僕は“すべてのジャンルはマニアが潰す”と思っていますから。ただ、今のプロレスに関しては、そんな排他的なコアユーザーは少なくて、みんなでプロレスを盛り上げたいという気持ちが強い。
だって僕がプロレス会場にいくと、ファンが“ありがとうございます!”って握手を求めてくださるんですよ。新日本を建て直したことに感謝してくれてるのだと思いますが、おカネをもらってるのは僕のほうですよ(笑い)。本当にありがたいです」
──新日本プロレスの会場には女性の姿もチラホラ見えるようになりましたね。
「イケメンレスラーが増えましたからね。そろそろイケメン選手を題材とした“薄い本”ができてもおかしくないですよ。ちなみに薄い本というのは同人誌のことなんですが」
──いわゆる「やおい本」のことですか?
「まァ、それが出たところで人気とはいえませんが……マイナーメジャー感が出ますよね」
──今後の展望についてはどう考えていますか?
「選手も会社ももっと稼げるような体勢を作っていきたいですね。トップの選手がCM一本出て数千万円もらえるようなり、億単位の年収を稼ぐようになればもっと活気が出る。目標は大きいですがWWE。今彼らの年間の売り上げは500億円といわれています。規模が違いますので、うちの場合は100億円いけば日本のWWEになったといってもいいと思う。たぶんいけますよ」