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時給600円だったパート女性がブックオフの社長になるまで

 時給600円のパート主婦から「ブックオフ」社長になった橋本真由美さんは、もともと、主婦は家にいるべきという考えだった。それが、

「働くおもしろさ楽しさに、はまってしまったんです」

 きっかけは<お好きな時間にお好きな時間だけ>と、記されたパート募集のチラシ。

「子供の成長とともにお金のかかり方がぜんぜん違ってきていて、節約だけでは心もとないな~と漠然と考えていたときだったんです。これなら家事とも両立できそうだし、家族に迷惑をかけずに学費の足しくらいは稼げるかな」と軽い気持ちで応募。ただし、

「子供の塾の送り迎えがあるので働けるのは5時まで。夫が休みの土日は働けない」という条件つきだった。

 ところが、仕事を始めるなり、すべての考えが覆った。ブックオフ1号店オープン直前で、買い取った古本をどう磨いて売るかは思考錯誤中。作家の名前順の陳列や、古本臭さを消す空調、明るく元気な接待法。みんなで話し合って提案したことが次々と採用され、形になっていく。「もう、おもしろくて、楽しくて…」。

 仕事のために残業・休日出勤は当たり前。家事との両立はあきらめて、掃除はしない、夕食は娘任せ。仕事の終了が深夜になることもしばしばだった。

 不思議と娘たちからの文句は少なかった。むしろ、ホッとしたのではないかという。

「すごい教育ママで、テストが返ってくる日は玄関で電卓片手に待ちかまえ、平均点を出してはガミガミいってるうざい母親でしたから(笑い)。それよりは、自分のことに一生懸命な母親のほうがずっとよかったみたいですね」

 ただ、夫とは始終けんかで、「オレとブックオフ、どっちが大切なんだ」と問われ、即座に「ブックオフよ」と言い放ったこともある。

「でも、家庭が円満でないと仕事にも悪影響が出るでしょ。けんかした当座は反省したふりをしながら、その後ちょっとずつ手抜き家事に戻るという繰り返しでした」

 お金を稼げるようになっていたので、夫が高価なゴルフセットを買うのを容認したり、娘たちに洋服をそれまでよりよけいに買ってあげたりなど、お金で不満を解決するという手も、なかなか効果的だった。

 家庭での理解をなしくずし的に得たあとは、仕事に一直線。主婦として培った経験は、客がはいりやすい店づくりをする上ではもちろん、お母さん的に仕事仲間をまとめるのにも威力を発揮した。パート2年目で2号店の店長に就任。

「儲けることに貪欲で、どうすればお客さんに喜んでもらえて売り上げを上げられるかばかりを考えていました」

 しかし、その一生懸命さは、ほかのパート・バイト仲間の反感を買うこともあった。

「翌日が週末で、在庫を並べておけばそれだけ儲かると思ったら、就業時間を過ぎても作業をやめることはできなかったんです。でも、ほかの人からすると、パートなのに、なんで、そこまでやるの?と言われて…」

 で、上司へ直訴。思いっきり、遠慮なく働けるために、私を社員にしてください、と。パートを始めて4年目のこと。

 そして16年目には社長に就任。現在は64才。取締役相談役として働いている。

「現役なので、孫たちのサンタさんへのお願いにも立派に応えられるのがうれしいわね」

※女性セブン2014年1月9・16日号

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