NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』がスタートする。「天下人」豊臣秀吉が最も信頼を置き、それゆえに最も恐れた智将・黒田官兵衛。「戦国最強のナンバー2」が駆け抜けた地を「官兵衛好き」を自任する元NHKアナウンサー松平定知氏が訪ねた。
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毛利輝元との和平交渉とそれに続く(明智光秀討伐の)中国大返しの手際の良さをみると、私は黒田官兵衛が本能寺の変を仕組んだのではないかとさえ思っていますが、この高松城址の地(岡山市)に立ってみて、その読みに自信を深めました。というのは、高松城は難攻不落だったので豊臣秀吉は織田信長に援軍を要請したとされていますが、現場を見る限り、深い堀も壮大な石垣もない平城で、とても難攻不落とは思えないからです。
秀吉と官兵衛が毛利攻略で、この地にあった高松城への水攻めの最中に本能寺の変は起きました。信長の訃報に泣き崩れた秀吉が落ち着くのを見計らって、官兵衛はこう囁いたといいます。「ご武運が巡ってまいりましたな」。
数万の軍勢を率いて猛スピードで京に駆け戻り明智光秀を討つ。鮮やかです。鮮やかすぎます。なぜなら、当日京都には家康接待のため、ごくごく少数の護衛を連れた信長がいるだけ。有力武将は誰もいない。多くの兵を持っているのは秀吉援軍に赴く光秀のみ(光秀ならこの状況に必ず気付く)。これは状況証拠でしかありませんが、官兵衛にはそれぐらいのをやってのけても不思議ではないと思わせる何かがあります。
今年のNHKの大河ドラマは黒田官兵衛が主人公ですが、私のもっとも好きな武将のひとりです。私が官兵衛を好きな理由は、忠義を重んじ、ナンバー2に徹しながら、そのくびきから解き放たれると自ら天下取りに打って出たところにあります。
撮影■太田真三
※週刊ポスト2014年1月17日号