1989年の日本シリーズは近鉄が3連勝。しかし、第3戦で勝利投手となった近鉄・加藤哲郎の「巨人はロッテより弱い」の一言に巨人ナインが激怒した。結果、奮起した巨人が4連勝し、近鉄の日本一の夢は消えた。
あまり知られていないが、実は加藤が記者に語った本当のコメントは「シーズン中の方が大変だった。打たれる気はしなかった」というものに過ぎなかった。かつて加藤は、本誌の取材にこう答えている。
「見出しになった言葉は、“巨人はロッテより弱いんとちゃうの?”という記者の質問に、“投手で勝ってきたチームだけど、打線はアカンね”と答えただけ。それを脚色された形です。ただ、誘導尋問に引っかかったとはいえ、3連敗した巨人を“強い”という方が失礼だと思いますよ」
1995年に引退してから10年以上の月日が経っていたが、ビッグマウスは健在。そして彼は発言に対して後悔どころか、感謝していた。
「反響の大きさには驚いたけど、悪い気はしなかったですね。それにあの言葉は、後に僕を助けてくれた。プロでは通算17勝しかしていないのに知名度は抜群でしたから」
実際、引退後には大阪のラジオ局で解説をし、ドラマにも出演するなど幅広く活動。取材当時も、飲食店の店長を任されていた。その店は程なく閉店してしまったが、
「現在は趣味の麻雀を生かして、関西の著名人麻雀リーグで活躍。“四天王”と称される腕前です。打ち筋は発言とは違って、慎重みたいですね」(夕刊紙記者)
※週刊ポスト2014年1月17日号