事件や事故が起これば現場にいち早く駆けつけ、昼も夜もなく政治家や官庁に張り付いて取材する。一般に、新聞記者の仕事は”激務”というイメージがある。ところが、最近はそうでもないらしい。
2013年10月に台風による土石流で甚大な被害を受けた伊豆大島を取材した全国紙遊軍記者のケース。
「発生直後に大島に上陸しました。当初は泥まみれになりながら歩いて被害の実態を取材しましたが、数日後には本社から応援が来たので、その後は毎日役場に行ったり近所を回ったりして『行方不明者は発見されました?』と聞いたくらい。災害現場では発生から少し経つと、意外とやることがないんです」
日常的な取材では、露骨なサボリも目につく。10月に本誌記者が出席した上場企業の決算発表会見では、堂々と最前列で舟を漕ぐ全国紙記者が……。後ろを見れば、居眠り記者は珍しくもない。
30代の全国紙記者が明かす。
「記者クラブでは”談合”もします。政治部で当たり前に行なわれるのは『コメント合わせ』。政治家のコメント内容が新聞ごとに違わないようにライバル紙の記者同士で調整します。自分が取材していない場合でもコメント合わせだけすれば済む」
中には、ICレコーダーを他社の記者に預けて会見に持っていってもらうケースもある。まるで学生の”代返”だ。
いまどきの新聞記者の仕事ぶりを聞くと、ジャーナリストとしてより、サラリーマンとしての処世術が充満している。地方支局は競争も少ないから、それがより顕著となる。40代全国紙キャップの話。
「私が支局にいた時は支局長が緩かったからいくらでもサボれた。午前中はゆっくり眠り、昼頃に県警本部か県庁に顔を出す。事件も事故もなければ適当な会見に出て記事を書く。終われば夕方でも飲みに行ける。一応、仕事をしてますというアリバイのために書く記事を”出席原稿”と呼んでいます」
※SAPIO2014年1月号