「一寸先は闇」といわれる永田町の2014年を占うには、政治の世界を裏の裏まで知り尽くした賢者の力を借りるしかない。本誌「老人党座談会」でおなじみの政界OB、村上正邦氏(元自民・80歳)、平野貞夫氏(元民主・77歳)、筆坂秀世氏(元共産・65歳)の3人が、秘密保護法案をめぐる議論に切り込んだ。
村上:今日、新しくなった官邸に初めて入って、安倍さんに会ったんだ。
筆坂:へえ、そうですか。
村上:うん。「国を憂うる集い」(※注)を代表して亀井静香と武村正義と私の3人で、特定秘密保護法について申し入れをしようと、安倍さんに会いに行った。安倍さんに、「開かれた官邸だとか、民主化された国会だっていわれてるけれど、あなたに会おうと奥座敷に来るまで、どれだけ厳重な関所があるの?」と、「何も開かれてないよ」っていったの、官邸は。
【※注】村山富市元首相や野中広務元官房長官ら長老政治家10人が特定秘密保護法案の国会審議などを問題視して会合を開き、代表として村上氏らが12月19日に安倍首相に申し入れをした。
平野:そしたら、何ていってましたか。
村上:笑ってたよ(笑い)。今日は秘密保護法への懸念については、亀井が代表して安倍さんに伝えたんだ。私は「十分な議論をせず、国論が二分するなかで強引に採択するなど、国会が死んでるよ」と。「あの法案は欠陥商品で、私が現役だったら、参議院じゃ審議しねえ」っていったんだよ。
平野:おっしゃる通り。秘密保護法はいまの国会の問題を象徴している。“ねじれの解消”などといって、結局、数の力で押し切る国会運営になっただけ。
村上:私は公明党に問題があると思うな。「私たちがブレーキになる」といいながら、全然ブレーキになっていないじゃないか。
平野:公明党は与党だから。
村上:だけど、1985年にスパイ防止法案が廃案になったときは、自民党内からも反対者が出てきたんですよ。
平野:谷垣(禎一・現法相)さんなんかはね。
村上:その谷垣が、衆議院で可決されるときに本会議場で安倍さんの横に映っていて、へらへら笑ってる。
平野:手をたたいてね。
村上:私は、法案の成否に対して国会議員は襟を正さなきゃならないと思っている。一つの法案が通って喜ぶ人もいれば、悲しむ人もいる。命を投げ出す人さえいる。法案成立は鎮魂の瞬間ですよ。だから、国会議員はその瞬間を厳粛に迎える態度が必要なんです。それをへらへらと。