「涙にはストレス解消の効果がある」と、メンタルヘルスケアの専門家である東邦大学医学部名誉教授・有田秀穂さんは言う。泣いた後ってスッキリするけど、最近いつ泣いたっけ? そんなあなたに、28才主婦が電車内で体験した感動エピソードをお届けしよう。
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母が急病との連絡を受け、私は1才の娘を連れ、急いで千葉の実家に帰ることに。ところが電車は朝のラッシュ時間帯でとても混雑していたのです。これまでも、子供が泣くのを恐れて、極力この時間帯に乗るのは避けていたのですが、この時ばかりはそうも言っていられませんでした。
おとなしく寝ていてほしいと願っていましたが、そんなに都合よくはいかず、大勢の人に驚いたのか、娘は大泣き。周囲は、スーツ姿のサラリーマンばかりで迷惑そうですし、あからさまに舌打ちしたり、「うるせえなぁ」とつぶやく人も…。
娘をあやそうとすればするほど泣き声は大きくなります。気ばかりが焦って、娘の口を手でふさごうか、本気で考えてしまいました。車両にいる全員が、私たちを疎ましく思っている気がして、情けないことに、私のほうが泣きたくなる始末…。
次の駅で降りてタクシーを使おうと決めたその時、斜め前の席に座っていた男性がふいに立ち上がりました。怒られるのかと身をすくめると、「外の景色を見せてあげるといい」と、席を譲ってくれました。しかも、「赤ちゃんは泣くのが仕事なんだから、気にすることはない」と、励ましてくれたのです。
現金なもので、外の景色を見始めると、娘はすぐに泣きやみました。でも逆に、思わぬ温かい言葉に、私の方が泣けてしまいました。
※女性セブン2014年1月23日号