現役時代、新しいトレーニングを取り入れることに積極的だった桑田真澄氏と独自のトレーニング論をもつ金田正一氏が、ペッパーやアメリカンノックなど日本独自の練習方法の良さや、金田式の理論について語り合った。
桑田:野球のためにつけなくてはいけない筋肉も当然ありますからね。実は結構、難しい問題なんです。僕は単純に白黒つける必要はないのではないか、とも思うんです。
金田:どういう意味だ。ワシに議論で敵わないということだったら、ハッキリいいなさい。恥ずかしがることはないぞ。
桑田:いや、そういう意味じゃなくてですね……(苦笑)。先ほどいったように、僕は良いとされるものを何でも試したかったので、ウェイトも10年しっかりやりました。それを踏まえて振り返ってみると、同じ筋力を鍛えるにしても、バーベルなどではなく、自分の体重を負荷とする「自重トレーニング」が一番だという結論に至ったんです。特に投手は自重が一番いいと思います。
金田さんがキャンプに来られた時に、練習でペッパー(投手と打者が2人1組になって行うトスバッティングの一種)をやるようご指導いただきましたが、あれは下半身の筋力強化にもなる。ペッパーは、実はメジャーではやらない。日本ならではのとてもいい方法なんです。
金田:アメリカンノック(ノックのときに守備する選手がレフトからライト、またはライトからレフトへ走りながら補給する練習)も同じだな。
桑田:そうなんですよね、やはり野球のフォームに則したトレーニングがいい。一般的なウェイトでは、腕の筋肉を鍛えながら、足や体幹を鍛えることはできません。野球選手の体はパーツごとの強さが問題なのではなく、全身がチェーンのようにがったうえでの強さが大事なのに、どうしてもパーツごとになってしまうから、実際のプレーでバランスを取るのが難しくなる。そうして崩れていくんです。
だから僕はウェイトをした後には、いま鍛えた筋肉が生きるように、必ずシャドー(ピッチング)をするようにしていました。
金田:そういえばワシも通常より重いボールを特注して、それを全力投球して鍛えていたな。もちろんフォームや肩に影響しないような、絶妙な重さのボールだ。
桑田:それ、今でいうスナップボールですよね。半世紀以上前から導入されていたんですか……。金田さんの理論は本当に先進的ですね。驚かされます。
金田:そうじゃろ、そうじゃろ(といいながら少し照れる)。
※週刊ポスト2014年1月24日号