長野県の諏訪中央病院名誉院長でベストセラー『がんばらない』ほか著書を多数持つ鎌田實氏は、チェルノブイリの子どもたちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。昨年末、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所を訪れた際に知ったチェルノブイリの現状を鎌田氏が報告する。
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昨年末、チェルノブイリに行ってきた。どうしても見たかったものがあった。チェルノブイリ原子力発電所のドームである。
チェルノブイリ原発の石棺は事故から27年が経ち、ひび割れがひどくなり、2年前には原発から50メートルほどの所で、最大毎時18マイクロSV(シーベルト)が漏れていることが分かった。そこで日本やEUなどがお金を出し合って、石棺の上にドームを作って放射能を遮蔽するというプロジェクトが立ち上げられた。その進捗状況をこの目で見たかったのである。
今回は爆発した4号炉の壁1枚隔てた3号炉の操作室まで入ることができた。ここは毎時29マイクロSV。目には見えないけれど、壁を伝わって放射能が漏れてくる感じがする。
2015年、ドームの覆いが完成すれば石棺を壊すという。しかし高放射性廃棄物になるので、これをどこに捨てるかが再び問題になってくる。
もう一つは、メルトダウンしてしまった燃料を取り出せるかどうかの問題。原発内を案内してくれた技術者に僕はその質問をした。
「私見ですが、取り出すことはできないでしょう。ずっとこのまま放射能が外に出ないように守っていくしかないのでは……」
そう答えが返ってきた。
福島第一原発に思いをはせる。福島も使用済み核燃料の処理ができたとしても、溶けてしまった核燃料を取り出すことが出来るのか──。万にひとつ、取り出せたとしてもそれを受け入れてくれる県があるかどうか。
続けて僕は「ドームは何年持つのか」と聞いた。すると「100年持つ設計になっている」という。
溶けてしまった核燃料は10万年近く管理が必要だ。100年ごとにドームを作っていかなければならないから、気の遠くなる話だ。
※週刊ポスト2014年1月31日号