アメリカの主要メディアが靖国参拝後に安倍晋三首相への批判の声を上げたのは周知の通りだ。「危険な日本のナショナリズム」「平和主義からの離脱」(ニューヨーク・タイムズ)、「挑発的な行動」(ワシントン・ポスト)といった具合だ。
その後、安倍首相は海外に火消しに回ったが、それも逆効果。ダボス会議(スイス)の海外メディアとの懇談の場で、安倍首相が現在の日中関係について、「第1次世界大戦前の英独関係に似ている」と発言したことが、「安倍は日中開戦を予想している」と、多くのメディアに批判された。自慢の経済政策についても、
「彼の目からは、日本は日の沈む国であることをやめて、経済の超新星になりつつあるのだった」(ニューヨーク・タイムズ)と、“独りよがり”を揶揄される始末である。米保守系のFOXニュースは安倍首相の弁明を一刀両断し、激しく非難した。
「安倍首相は靖国神社とアーリントン国立墓地(ワシントンの戦没者慰霊施設)を比較してアメリカ人の懸念を鎮めようとしたが、苛立ちを怒りに変える結果になった。比較にならない!
アーリントンはアメリカ人の英雄の勇気を称える場所であり、戦争犯罪で有罪になった人たちの卑劣な行為を称える場所ではない」
靖国神社も日本のために戦った戦死者たちを祀る施設であることに変わりなく、この主張はアメリカに根強い「戦勝国史観」の典型である。この比較は、昨年5月に安倍首相が米メディアに語ったもので、参拝後にも側近の萩生田光一・総裁特別補佐が代弁しているが、政権側が不用意にアーリントンを持ちだしたことが、アメリカの保守系メディアまで敵に回してしまっていることは事実だ。
※週刊ポスト2014年2月14日号