安倍晋三首相の靖国神社参拝について、アメリカの主要メディアが「危険な日本のナショナリズム」「平和主義からの離脱」(ニューヨーク・タイムズ)、「挑発的な行動」(ワシントン・ポスト)といった批判をした。
だがそれは、アメリカだけではない。本来、親日的であるはずの国々のメディアでも「日本の右傾化と軍国主義の台頭」(フランス24)、「安倍は友人やオーストラリアのような同盟国が尖閣問題で彼を支持しにくくなる状況を作っている」(オーストラリアのオーストラリアン紙)と安倍批判の嵐が吹き荒れている。
とりわけ問題なのは、日本が中国と渡り合うために連携を築かねばならないアジアにまでその波が及んでいることだ。たとえば、タイのバンコク・ポスト1月27日付。
「日本は、中国が非常に高い購買力のある市場であることを忘れてはいけない。愛国心の為にそんな市場を見過ごすのは愚かで、完全に無知だろう。(中略)世界第2位の経済大国という地位を失った日本はさらに減退するリスクがあり、アジアの巨大国家を軽視するのは日本だけだろう」
インドもまた、「中国、韓国との緊張関係を悪化させることで地域における関係を弱体化するリスクを冒している」(インドのヒンドゥー紙)と非難している。
日中とアジア諸国とのパワーバランスの中で、日本よりも中国のほうに外交的な目が向いている国が増えていることの証である。
海外の批判のなかでも特に際立つのは、第2次世界大戦で、同じ敗戦国となったドイツにおける反応だ。
日刊の大衆紙であるフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥングは、「日本は常に反面教師だ。第2次世界大戦の残虐行為を今もなお否定している」、「日本はバンカーに入って他国に呪いをかけており、この呪いは日本に跳ね返っている」と強い言葉で日本を非難した。
日本は常に中国、韓国から、ナチス時代について全面謝罪しているドイツと比較されるが、他ならぬドイツのメディアからその論法で批判されたのだ。
※週刊ポスト2014年2月14日号