このところ、テレビ東京では、太川陽介と蛭子能収コンビの珍道中『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』や海外に滞在する日本人を追う『世界ナゼそこに?日本人』などの人気番組を輩出しているが、他局でも同じコンセプトの番組が制作されるケースが目立っている。なかには、太川陽介と蛭子能収コンビをそのまま起用する局まで現われている。
なぜテレ東の番組は、他局に真似されるのか。その原因は、「目標視聴率」の設定にあるという指摘がある。そもそも、テレビ局員なら誰もが気にする視聴率は、いったい何%獲れば合格点なのか。テレビ局関係者が語る。
「今の時代、ゴールデンタイムなら、2ケタに乗れば安泰です。番組が終わるとは考えづらい。10年前くらいまでなら、12%は確保しておきたかったですが、いまや12%も獲れば、週間ベスト30に乗ることもあるほど。視聴率の全体的な地盤沈下が起きていますからね」
ただ、テレ東の場合は話が別だという。同局と仕事をする放送作家が語る。
「テレ東の場合、ゴールデンで7%なら、問題にはならない。ゴールデンに限らず、他局の合格ラインの7掛けと思っておけばわかりやすい。5%以下が続けば、終了の危険性が高くなる」
他局と比べて低い目標値だが、これが逆にテレ東の創造性を上げているという指摘がある。前出・放送作家はこう分析する。
「目標とする視聴率が低いので、好き勝手にできるんですよ(笑)。7%獲れば合格なのと、2ケタ獲らないといけないのでは、企画からして大きく違ってくる。たとえば、4年前、深夜枠からゴールデンに移行した散歩番組『モヤモヤさまぁ~ず2』は最近2ケタに乗ることも珍しくない人気番組ですが、ゴールデン移行当初は1ケタが続いていた。
そもそも、他局なら会議で『ゴールデンで、ただ散歩しても2ケタ取れるわけない』という判断が下され、ゴールデンで放送すらされなかったでしょう。実際、テレ東でも最初は1ケタだった。仮に他局で始まっていたとしても、2ケタに到達する前に番組が終わっていたはずです。
しかし、テレ東のゴールデンは『7%あれば御の字』ですから、思い切って冒険できるんです。他局が二の足を踏むような企画でも、テレ東なら通る。攻めのテレ東、守りの民放他局、といったところでしょうか」
最近では、他局でもゴールデンタイムで街中を散歩する企画を目にするようになってきた。
「他局にとっては、『テレ東で7%取っている』というのは保険になるんです。『テレ東以上に豪華な出演者を出して、お金をかければ、数字はプラスされていく』という考え方。だから、テレ東で数字を獲っている番組はマネされやすいんです。逆にいえば、テレ東は他局の番組をマネするほどの金銭的体力がないから、知恵を絞るしかないわけです」(同前)